漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
3―1 【風】
【風】は「帆」の原字の「凡」と、「虫」が組合わさった漢字。
しかし、なぜ虫なのだろうか?
一説に、「かぜ」が吹き、虫が揺らされている様だとか。「うーん、これこじつけ?」と言いたくなる。
そんな【風】、映画では、やっぱり――「Gone with the Wind」
ヒロインのスカーレット・オハラの波瀾の人生を描いた「風と共に去りぬ」だ。
その映像の中に、今でもアメリカで一番人気のセリフがある。それはレット・バトラーがスカーレット・オハラに吐いた捨てゼリフ。
振り向きざまに、「Frankly, my dear, I dont give a damn.」
要は、「知らないね、勝手にするがいいよ」と言い放つ。
この「damn」が宗教上の観点からアメリカ人に衝撃を与えたとされている。
さて、それでは日本人にとって、人気のあるセリフは何だろうか?
それは、その後に続く、スカーレット・オハラの最後の言葉だ。
「After all, tomorrow is another day.」
これが名訳され、字幕として登場した。
―― 明日は明日の風が吹く ――
まことに上手いこと訳したものだ。
「明日はもう一つの日」を、「明日は明日の風が吹く」とは。
そして、その映画の初公開からすでに70年以上の歳月が流れた。
しかし、やっぱり明日になれば吹くだろう、明日の風が。
しかも、きっと心に優しい風が……。
いや、そうあって欲しいものだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊