漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
20―6 【老】
【老】、上の部分は長髪の人を横から見た形だとか。
それに逆さまになった死者の形の「七」が組み合わさった。これにより長髪の老いた人を【老】と言うらしい。
人は俗界に生まれ出て、そして老い、黄泉の国へと旅立っていく。誰しもこの宿命から逃れられない。
しかし、古今東西、諦め切れないヤツがいたし、今もいる。命がけで不老長寿の薬を探し求めているのだ。
だが、見つからない。
しかし、ここへきてわかった。この世に不老不死の不届きなヤツがいると。
そやつは――「べにくらげ」
突然ある日から若返って、また人生をやり直すそうな。しかも同じDNAを持ち続けるため、ご本人そのものだ。
これ、ホント羨ましいですね。
もし若返れたら、17歳で叶わなかった恋をやり直したい。
また検事となって、世の悪と戦いたい。こんなリベンジが果たせるかも……。
ということで、何億年も生き続けてる「べにくらげ」の酢の物、どこかで売ってないだろうか? できれば、そのDNAを取り込みたい。
てなてなことで、【老】はいつも「生」に執着させる漢字なのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊