小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

INDEX|128ページ/269ページ|

次のページ前のページ
 

18―6 【蕗】

 【蕗】(フキ)はキク科の多年草。そして春に向けて芽を出す。それが蕗の薹(ふきのとう)だ。これを摘まみ、和え物や天ぷらにして食す。
 ほろ苦く、独特な味わいがある。その苦さにより、長い冬を抜け、やっと春の訪れを感じる。
 それから季節は巡り、蕗の薹は初夏に丸い葉を広げ、葉の広さ70センチほどのフキになる。

 アイヌの小人伝説、コロポックル。これはアイヌ語で「蕗の葉の下の人」という意味だ。

 かってアイヌが住む地に、コロポックルと呼ばれる人たちが住んでいた。背丈はフキの葉より低いが、動きが素早く、魚を捕るのが得意だった。そしてフキの葉で葺いた竪穴で暮らしていた。
 アイヌとコロポックルとは仲が良く、アイヌからは鹿、コロポックルからは魚を物々交換していた。

 しかし、コロポックルは姿を見せることが嫌いだった。日が暮れて夜になってから、アイヌの家の小窓から捕った魚をそっと差し出す。物々交換と言っても、こんな方法だった。

 そんなある日、コロポックルの姿を見たことがないアイヌの若者、一度見たいと魚を差し出した手を引っ張った。そして、コロポックルを屋内に入れてみると、手の甲に刺青が入った美しい婦人だった。
 しかし、この婦人は若者の無礼に激怒した。また、この話しを耳にしたコロポックルの人たちは同じように怒り、北の海の彼方へと去って行ってしまったのだった。

 こんなコロポックル伝説があるが、今もあちらこちらで、残されたコロボックルの竪穴や、石器や土器が見付かることがある、という。
 おっおー、なんと情緒ある伝説だろうか。

 それにしても、そこには春に芽吹くふきのとうと同じく、ほろ苦さがあるから不思議だ。