小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

INDEX|125ページ/269ページ|

次のページ前のページ
 

18―3 【城】

 【城】、右部の「成」は戈(ほこ)に飾り付け、お祓(はら))いすることだとか。したがって、【城】とは清められた場所ということだそうだ。
 そんな【城】、歴史の中で様々なドラマを生んできた。その一つが琵琶湖の湖北の山城、小谷(おだに)城だ。

 時は約440年前の1573年、城主の浅井(あざい)長政と織田信長の妹のお市の方、この二人は政略結婚ではあったが、仲睦まじく暮らしていた。

 しかし、同朋の越前の朝倉義景が織田信長と対立した。これにより織田家/浅井家の友好関係は破断してしまう。
 豊臣秀吉は織田信長の命を受け、三万の兵をもって攻めた。こうして小谷城は落城した。
 それは浅井長政29歳、お市の方26歳の時のことだった。

 そして浅井長政は無念の自害。しかし、お市の方は生き延びることを選択する。
 燃え盛る炎の中から、茶々、初、江の幼い浅井三姉妹を連れて【城】から下りてきた。

 しかし、長男の万福丸は殺害され、次男の万寿丸は出家させられる。
 それから9年の歳月が流れた。1582年6月に本能寺の変が起こった。この明智光秀の謀反で、織田信長は没す。  
 その3ヶ月後、お市の方は三姉妹を連れて柴田勝家と再婚する。

 しかし、穏やかな日々はそう長くは続かなかった。翌年の4月23日、秀吉が越前の北の庄城(福井)を攻める。 
 お市の方は前回小谷城で浅井長政を残し、生き延びた。多分、なにか心に去来するものがあったのだろう。今回は死を選んだ。
 夫の柴田勝家と共に城に火を放ち、炎の中で自刃する。

 しかし、この時……茶々は16歳、初は14歳、江は12歳。浅井三姉妹は【城】から出てきた。

 ことほど左様に【城】、それは住む者たちの生と死を分けていく。
 そして、そこからまた【城】は新たなドラマを生みだしていくことになるのだ。