漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
2―1 【縁】
【縁】は(えん)と読む。また(えにし)とも読む。
元々の意味は織物の「へり飾り」だとか。
それにしても不思議なものだ。歳を一年一年重ねるごとに、人の一生はこの【縁】に支配されているのではないかと思われてくる。
若い頃、年寄りが「それは縁だね」と物知り顔で話していた。
それを聞いて、「何が?」と思ったりもした。
それが今では、人との繋(つな)がりはすべて【縁】のように思われるのだから……。
『一樹(いちじゆ)の陰(かげ) 一河(いちが)の流れも 多生の縁』
同じ木陰で雨宿りするのも、同じ川の水を汲むのも、すべては前世からの因縁。
まったくその通りだ。
そして、桑田佳祐氏・作詞/作曲のこんな歌がかって流行った。
人は誰も愛求めて、闇に彷徨(さまよ)う運命(さだめ)
そして風まかせ Oh, my destiny
この「destiny」、それは「さだめ」だ。
そして、強いて訳せば【縁】。
確かに、【縁】は風まかせ。風が向こうから運んできてくれるものなのかも知れない。
だが教育学者の森信三は言う。
人生、出会うべき人には必ず出会う。しかも、一瞬遅からず、早からず。
しかし、内に求める心なくば、眼前にその人ありといえども【縁】は生じず。
【縁】は風まかせ、それとも求めるもの?
どちらも真実のような気がする。
だから、より一層、「縁は異なもの味(おつ)なもの」になり得るのだろう、多分。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊