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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 事情をどこまで知っているのか知らないが鍵さんからお礼の電話もあった。
 コールマンから取引を持ちかけられたジュンの父ローランド氏は裏金作りの為快く受け入れ多数の武器を売り渡したが途中で事の重大さに気づき恐ろしくなり撤退を申し出た。
 コーツは口封じのためローランドの抹殺を指示。用心深かったローランドは取引の現場に社員を派遣した。問答無用で発砲してきたコールマンの部下達により、この憐れな社員は人違いで射殺されてしまった。
 ローランドは奴らの出方を見るためとりあえず社員を送り込んだのか?いや何かあったら身代わりにするつもりだったのは明らかだ。なにしろローランドは自分の帽子とコートをプレゼントし着ていくようにとまで言っていたからだ。
 ローランドは自分が殺されたら秘密を他者が暴露すると例のファイルの存在をほのめかし一時コーツらの攻撃を止めさせた。それでもこのままではいつ殺されるかわかったものではない。そう思ったローランドは取引の再開を申し出またこの街を訪れた。
 そして俺に撃たれた。
 依頼は「彼氏」の仇をとるだった。自らの陰謀、保身のため弱者を手駒にし切り捨てた人間たち。ローランドはまさに仇の一人だった。
 俺達はローランドを殺せばファイルを持った人物は当然コールマン一味に消されたと勘違いしファイルを公開すると踏んでいた。コールマンの陰謀を暴くにはそれが一番手っ取り早いと考えていた。一石二鳥だ。恥ずかしい話、黒幕であるコーツの存在はこの時点では知らなかったのだ。
 しかしファイルは偶然ジュンが持ち出してしまったため公開されなかった。俺達は次の手を考えていたのだが、そこにローランドの娘がこの街に来ているという通報を受けた。もちろん早安の親父からだ。あの日俺は念のため探りを入れようとジュンに接触した。
 そしてローランドのファイルから黒幕がコーツであることを知ったのだ。
これが今回の事件の真相だ。
 俺が初めてジュンを見たのはラーメン屋がくれた資料の上だ。なんて事のない隠し撮りの写真とプロフィール。それが本当の出会いだった。
「ジュンちゃん、どうしてるかね。あ、はまった。爆弾置く」
 アリスの話し方はいつもと違って感情がこもっていなかった。
「俺の知ったことじゃないさ。ほい、竜撃撃つ」
 ああ、さっきから語尾につく罠だの爆弾だのの不穏な言葉はゲーム内のやり取りだから気にしないでくれ。
 俺は悪党を殺した。それは間違いない。
 しかしそれで何になったのだろう。
 何を得て何を無くしたのだろう。
 誰かを助けられたのだろうか。
 ルガーP08はピカピカに磨きぬいてまた武器庫のケースの中だ。
 あの銃は悪ではない。
 少なくとも今まで俺を守ってくれている。
 誰も殺したりはしない。
 殺したのはこの俺だ。
 事務所の棚に写真が飾られている。
 俺達BIG-GUNとジュンが写っているあの写真だ。みんな笑っている。
「あ、やべ落ちた」
「へたくそ」
 落ちたとはミスの事で3ミスでゲームオーバーだ。くそ、この巨乳め。自慢するだけあってやけにうまい。
「やほー、ひま?暇そうね」
 突然涼風のような声が事務所に通り抜けた。
 今日は青い長袖のブラウスで下はやっぱりミニスカート。ショートブーツも相変わらずだった。長い髪も日差しのような笑顔も変わりない。
「また家出してきちゃった。宿貸して」
「ここは便利屋で宿屋じゃないぞ」
「またまたー、泊めてお風呂とか覗きたいんでしょー」
 のぞいていいならいくらでも泊めてやるが。
ジュンはアリスにこんにちはーなどと声をかけながらパタパタと店に入ってきた。
「お邪魔そうだから、一人で捕獲しとくわよ」
 ゲーム機から目を離さずアリスおねーさんは2階へ上がって行った。ゲームを中断しないところはさすがおたくである。レアアイテムでるといいな。
「あ、これ」
 ジュンが写真に気がついた。
「ジムは?」
「外出中」
「三郎君は?」
「警察に事情聴取中の恋人に会いに行った。意外とまめなんだ」
 ベンに視線が移ってさすがに表情が曇った。
「お前のせいじゃない。気にするな」
 まぁ無理な話だろうが。軽くうなずいたようには見えた。
「これちょうだい」
 構わないがスタンドは返せよ。
「ねぇ、ケンちゃん」
 少し間を置いてジュンは呼びかけてきた。真面目な声だった。ちょっと焦る。
「まだメールの返事返ってないわよ」
「ドタバタしてたから忘れたな」
 さらに突っ込んでくるかと思ったがいたずらっぽく笑いやがった。
「もう変な仕事やめなよ?」
「ん…… そうだな」
 それもいいかもな。俺は本気でそう思った。
 そこへ。
「もし…… BIG-GUNとはこちらですか?」
 三人組の中年男が来店した。全員スーツで帽子まで目深にかぶっている紳士たちだが何か思いつめた表情である。見るからに普通じゃない雰囲気を漂わせている。真剣で影があり「背徳」の怯えも見える。「仕事」の依頼人によく見られる特徴だ。
ジュンの表情がこわばった。
「はい、いらっしゃい。御用は?」
 腕を組む振りをしてショルダーホルスターのベレッタに手をかける。すると真ん中のちとハンサムな男がにこりともせずつげた。
「ジャック・マクソン氏の紹介で来ました。あなた方がNo.1だと」
 早安の親父だ。
「話は聞いています。奥の部屋へ」
 俺は三人を事務所奥の応接間に通した。ジュンの横を通る時、中央の男は軽く会釈したが帽子までは取らなかった。ジュンにはカタギの仕事の話ではない事が確信できたのだろう。俺にクレームをつけようと口を開いた。
 そのかわいいお口が言葉を発する前に俺はおどけて言った。
「悪いな、ちょっと店番頼むぜ」
 返事を聞かず俺はドアを閉めた。
 ふくれっ面をしたちょっとセクシーな美少女の姿は分厚いドアの向こうに隠れた。

The end.