小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

INDEX|14ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

「……それとベイと何の関係が……」
「本当に皆まで言わなければならん奴だな! いいか、ベイブルースは現在4年連続最下位だ! どん底と言っていい! そんな弱いチームを本気で応援できる奴に悪い奴がいようか? いいや、いるはずがない!」
 反語まで用いて解説した俺にジュンは圧倒され、言葉をつげなかった。
「まぁ…… 勝手にしてよ」
「エキサイトしているところ悪いんだけど」
 ジムが切り出した。
「名前書かれてるの鈴木治夫本人じゃなく妻の方な?」
「へ」
 よく見ると写真にも踊り狂う鈴木氏を隣から冷ややかに見つめるおばさんが映っていた。

 あくる朝。夕べはその後何もなかった。何もしなかった。
 ジュンちゃんのお風呂も覗かなかったし、夜這いもかけなかった。
紳士だ、我々は。
が、女の子が自宅に来てお風呂はいったり寝泊りするってなんかドキドキするね。
で、俺はいつものように6時に起き軽い柔軟体操の後ランニングに出かける。10キロを30分で走る。実戦的なランニングだ。続いて筋トレ。で、7時になる。朝飯は各自適当に用意して食うのが慣例。俺はベーコントーストとポテトサラダを大量の牛乳で流し込む。この辺でジュンが起きてきて朝飯をよこせとおっしゃったので分けてやった。こいつが朝飯作ると言い出す前に用意しておいたのは正解だった。
 ジュンは昨日とは服装が変わっていた。白のTシャツに薄いピンクのベスト、今日もミニスカートで色は白かった。下着も替えただろうけど何色かまでは情報を持っていません。
 家出中だってのに衣装もちなやつ。
 とにかく俺達はおばさん「鈴木 峰子」と接触することにした。おばさんの情報はすでにラーメン屋から出前済みだ。接触そのものは三郎が任せろの一言で引き受けた。少々むかつく野郎だが仕事に関しては抜群だ。任せとけばまあいいだろう。 で、俺は引き続きお嬢様の護衛なのだがさすがに今日はラクチンだろう。何しろ命を狙われているかもなのだ、が。
「お前狙われてるんだから出歩くなよ」
「やだ」
 という会話でややこしくなった。
 普通に考えて俺の意見は正しい。そうだろう、怪しい組織に狙われているのだ。出歩こうとする方がどうかしている。
「確認したい事があるのよ」
 駄々っ子というより少し男前な顔つきだった。それで俺は真面目に聞いてやった。
「何をだ」
「パパの殺された場所に何があるか」
「もう行ったんじゃないのか」
「行ったわ。なんて事のない下町だった」
 やれやれだ。
「ならなんで」
「おかしいと思わない?」
 エメラルドの瞳が厳しく俺を見つめた。
「どこに笑いの要素が」
「…… 拳銃会社の社長がなんで下町なんかにわざわざ出向いたのか。そこを狙い済ましたように殺されたのか」
 ふーむ。
「昨日行った時は疑問に思わなかったけど、夕べ考えてたらどうにも気になって」
 プロの殺し屋が待ち伏せしていたのなら当然ローランド氏がそこに行く必然性があったはず…… というのがジュンの意見だ。論理的だ。しかし危険すぎる。
「俺達が見てくる。お前はここにいろ」
 しかしやはりジュンはうんとは言わなかった。予想はしてたがね。家出してまでやってきた娘だ。人任せにするわけはない。
 仕方ないので出かける事にした。その前に。
「ピストルほしい」
 とジュンが言い出した。
「危ないなら護身用に持ってた方がよくない?」
 それはどうかな。なまじ持ってると却って危険な気もする。が、どうしてもと騒ぎ出したので仕方なく武器庫へ案内した。
 商売柄、そして趣味の関係でここにはいっぱい鉄砲の類は置いてある。地下のガレージの横の物置にそれらはしまってある。頑丈な鍵を開けて中に入るとジュンは「おお」と声を上げた。
「すごい、ここ軍隊なの?」
 それは大げさだ。だが驚くくらいの数の銃があった。武器庫の広さは10畳ほど。その壁に埋め込み式の棚があり、用途別にライフルやマシンガンが並んでいる。部屋の中央には陳列棚があってここには拳銃がずらりだ。弾丸類は隣の部屋にまとめてある。
 俺は中央の棚からジュンでも扱えそうな小型拳銃を見繕おうと目を走らせた。見たところ手の平はかなり小さい。銃を扱いなれているということも無いだろう。
「拳銃撃ったことは?」
「学校の講習受けたわよ?」
 今日び小学校でも護身術の授業は年に一回くらいは行われている。拳銃の基本的な扱いくらいは学べる。しかしそれで身を守れるかといえば疑問だ。あれは護身術に興味を持たせる程度の効果しかないだろう。拳銃を護身用に持っている人は多くいるが実際にそれで身を守るのは難しいものだ。拳銃で身を守るということは大概相手も拳銃を持ってこちらを脅かしているということだ。そいつが撃つより早く銃を抜いて相手に撃ちこみ、そいつを行動不能にしなくては身を守れないのだ。
 拳銃というものは選ぶのも難しい。女の子の銃といえば小さい物がいいだろうと安易に考えがちだが実際には小さすぎると握りづらく反動も大きくなる。かといって反動が小さい弾丸では威力が小さくなり相手に十分なダメージを与えることが出来なくなる。
 まあ扱いやすさと大きさのバランスでいくとリボルバーならS&WのKフレーム38口径「M10」。オートなら俺が使っているベレッタM84か、こいつのシングル弾倉モデルM85あたりか。
ちらりとみるとジュンは真剣に何かを探しているようだった。
「何だ? 目当ての銃でもあるのか?」
「ん…… そうね」
 大きな目が珍しく俺から逸らされた。
「上が、尺取虫みたいになる銃知ってる?」
 素人ならともかく、銃の知識がある人間なら知らない奴はいないだろう。
「ルガーか? あれは駄目だよ。古い銃で安全に持ち歩けない。第一お前には扱えないよ、軍用の大型拳銃だぜ」
 するとジュンは大げさにかぶりを振った。長い髪がぶんぶんと振られた。
「違うの、ちょっと見たかっただけ」
「そうか? まぁ、コレクションで持ってることは持ってるけど」
 俺は壁のほうの棚に向かい扉を開けてアルミケースを取り出して奥の机においた。これはクラシックガンなので貴重なのだ。
 ケースを開けるとスポンジに埋まるように「ルガーP−08」が収まっている。機能美に満ち溢れた美しいボディと尺取虫のような特殊な機構のおかげで今でもコレクターに人気があり程度のいいものは100万の値がつくこともある。俺のはフレームとレシーバーは本物だが内部の部品はほとんど後世に作られたレプリカなため、作動は良好だがコレクターアイテムとしてはあまり価値はない。
 俺は手に取るとマガジンを抜きトグルを一回引いて薬室内に弾丸が入っていないのを確認するとジュンに手渡した。ジュンはおずおずと受け取った。重さに少し驚いた顔をしてしばらく眺めてから「もういい」と突っ返してきた。表情は硬い。拳銃に接すると恐怖を感じる人間は多いが……
「なんだよ、自分で見たがったくせに」
 ジュンは黙って横を向いた。丸みを帯びた横顔はやはり歳より幼く見える。
「それでパパ殺されたらしいの」
「?」
「目撃者がちらっとだけど尺取虫みたいな銃だったって証言したらしいの」
「そうなのか……」