地球年代記 ~カルマ~ 第一話 「ムー大陸の最期」
報復のために、UEC連邦とカリメアの連合軍が放ったオリハルコンの火矢が、空をよぎってアシュロに飛んで行くのが見えた。
すでに大地は唸りを上げながら激しく振動していた。まもなく世界は終るのだろう。
外洋に乗り出して行った人たちを見送ると、私は水族園に取って返して、最後の仕事に取り掛かった。
水族園に着いた私は、海に繋がっている大プールの水門を開け、すべての鯨たちを海に解放してやった。
長年、鯨の研究をして来た私は、彼らがとても知能の高い生き物である事を知り、鯨に歌を教えておいた。
きっと鯨たちは、私が教えた歌を…ムー大陸で起きた出来事を、子々孫々にまで歌い継いでゆく事だろう。
もし、人類に未来があるのなら、いつしか私が教えた「鯨の歌」が未来の人々に伝わるに違いない。
そして、未来の人たちは、鯨の歌から、ここムー大陸で我々が犯した、愚かな過ちを知る事になるだろう。
どうか未来を生きるであろう人々は、我々と同じ過ちを繰り返さないで欲しい…と切に願う。
私は迫り来るムー大陸の破滅を前に佇みながら、大プールの水門から出て行く鯨たちを見送った。
鯨たちは、まるで別れを告げるかのように、高く潮を噴き上げながら、故郷の海に帰って行った。
もしも、あなたが鯨の歌を聞いたなら想いを馳せて下さい。人々の業によって滅んだ「ムー大陸の最期」に…
作品名:地球年代記 ~カルマ~ 第一話 「ムー大陸の最期」 作家名:佐渡 譲