プリズンマンション
空き巣に入られた都鳥は、犯人の鼠をあと一歩の所まで追い詰めたが自首されてしまった。刑務所まで刺客を送るのは騒ぎが大きくなるので控えて出所して来るのを待つ事にしていた。
「そこまでして・・・どんな用事ですか」
神戸は丹波屋が鼠にどんな用件で会うのかちょいと気になった。
「なーにちょっとした野暮用や・・・それよりお祝いお祝い」
丹波屋はその目的をはっきり言わず、笑って話をはぐらかし別の祝いの輪に入って行った。 それから1ヶ月後の日曜日、マンション住人主催の山本健一出所祝いのバーベキューパーティーが中庭で行われた。
この様な祝いのパーティーは、このマンションでは通例になっている。ここに誰もが帰る居場所があるのだと住人に認識してもらう為に丹波屋が考えた行事だ。このマンション住人で刑務所に入った者の大半は真面目に務めて模範囚で出てくる事が多い。ならば始めから別荘に入るような事をしないのが世間様にも一番いいのだが、その筋の業界人には職業柄さけられない事なのかも知れない。
参加は強制ではなくその日に出席出来る者が自主的に参加している。その際に、参加者はそれぞれに料理などを持参する事になっている。それもなるべく家庭の手料理で、特にお袋の味の田舎料理が喜ばれる。出所した者にはシャバの嬉しい味だ。これも帰る居場所はここだとアピールするのに欠かせない小道具になっている。
「健さん、ご苦労様でした」
「ありがとう、やっぱりここはいいなー」
懐かしそうに建物を見上げて主役の山本健一は神戸長次と握手した。
「これもみんな理事長さんが頑張ってるからだな。ありがとう」
「私なんか何もしてませんよ。この前の騒ぎだって丹波屋さんのおかげです」
「何や、わいがどないかしたってか」
ほろ酔いでご機嫌の丹波屋が嬉しそうに話しに入って来た。
「鼠の件、あいつに伝えておきました。出たら必ず会いに来ると言ってました」
「ありがとさん」
「マンションに入った事で追いかけられてると知って、追手から逃げる為に自首して入ったのだと言ってました」
「一番安全な所に逃げ込んだってこっちゃな」
「あいつに頼み事ですか」
「都鳥はんには申し訳ないが、ちーっと目をつむってもらってな。わてから都鳥はんにはお頼みしますわ」
空き巣に入られた都鳥は、犯人の鼠をあと一歩の所まで追い詰めたが自首されてしまった。刑務所まで刺客を送るのは騒ぎが大きくなるので控えて出所して来るのを待つ事にしていた。
「そこまでして・・・どんな用事ですか」
神戸は丹波屋が鼠にどんな用件で会うのかちょいと気になった。
「なーにちょっとした野暮用や・・・それよりお祝いお祝い」
丹波屋はその目的をはっきり言わず、笑って話をはぐらかし別の祝いの輪に入って行った。