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夏経院萌華
夏経院萌華
novelistID. 50868
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短編集~サービスなんで~

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久美は念願の犬を飼える喜びに心ウキウキさせていた。
もう3か月も前から無性に犬が飼いたくなったのだ。
それをお父さんに何度も何度も懇願し、今度の通知表で成績が上がったら買ってくれる約束を取り付けたのだ。久美は猛勉強をした。その結果、成績は上がり、お父さんも「約束は約束だからな」と犬を飼うことを許してくれた。
 ペットショップへの道すがら、久美はほんの1週間前にショーウィンドウから覗くあの円らな瞳の茶色のロングコートチワワに心奪われていた。その子がまだそこに居ることを祈り、歩いていた。
 そして、ペットショップに着くと久美は一目散にお目当ての犬の所に駆け寄った。
「いたぁ〜」と声を思わず出す。
店員も久美に近寄り、「その子可愛いんですよ」犬をゲージから出してくれる。
温かい。久美がその犬を抱く温もりが腕から伝わりそれが脳に幸せと変換される。
「この子ください」久美は目を見開き、店員の目を見る。
店員もニコッと微笑み、「ワンちゃん飼ったことある?」と訊くので「ない」と答えると店員は「じゃあ」と言い、トイレやら、トレーやら餌などを見繕い、テーブルに置いた。
「すみません・・・・そんなにお金持ってないんです」
久美が恐縮しながら言うと
「これはサービスです。気にしなくていいよ」
店員がそれらを紙袋に入れていると、店長らしき人がやってきて、
「お買い上げありがとうございます。かわいがってくださいね」と言うと
黒のロングコートチワワを久美に差し出した。
久美はなにがなんだか分からない。
「あの・・・私は茶色の・・・」と困惑していると、
「はい。こちらはサービスです」と店長はニコニコしながら久美に黒の犬を手渡す。久美は2匹のロングコートチワワを持って家に帰った。
                  
おしまい

              

古本屋
 雅史は本が好きだ。週に5冊から7冊は読む。それくらい好きなのだ。
読んだ本はもう1000冊は超えている。だけど小学生の雅史にはたくさんの本は買えない。だから、もっぱら、本は古本だ。
 今日も雅史は読み終わった本がいっぱいになったので其れを持って古本屋に出かけた。今月もだいぶ読んだ。これを元手にまた本が読める。最近ハマっている推理小説も読みたい。あの推理小説は心ハラハラさせてくれる。そんな事を思い描きながら古本屋へと向かった。
 自動扉が開くと古本の独特の匂いが立ち込める。
雅史はこの匂いが好きだ。読み終った本の査定をしてもらっている間に本を探す。いや、すでに読みたい本は決まっていた。それらを手に取る。すると、ワゴンに置かれた山積みになっている大量の本。そこに書かれた文字。
「一冊どれでも1円。たくさん読みたい人必見。サービス品」と書かれていた。
1冊1円の文字に雅史は心躍らせた。今手に取っている本は1冊100円。
雅史にとってこれは夢のような出来事だ。さっそく雅史はそのワゴンへ向かい、本を掻き分けた。
「短編推理小説第3巻」最新刊だ。これを読めるのはまだまだ先だと思っていたのに、1円にある。雅史は本を裏返し値段を確認する。1円だ。
雅史は嬉しくなり、そこにある本を10冊買った。それでも10円。なんとお得感満載なのだ。査定も終わり本を買った。夢のような出来事に意気揚々と家に帰った。大量に買った本をバサと机に置いて悦に入る。もう少し買ってもよかったかなと思いながら、あの最新刊を手に取った。
 面白い。ドンドン読み進んでいくと、赤い丸が点いている。
雅史はすこし、憤りを感じた。こんな本を売るなと。
 そしてさらに読み進めるとなんと、赤い丸をされた横に「こいつ犯人」と書かれていた。雅史はビックリした。何かのいたずらか。それでも雅史は気にしないで読んでいく。だけど、こいつ犯人の文字が頭にちらつく。結局読み終ると犯人は赤い丸をされていた人だった。
 これはどういう事なんだ。まったく読み応えがないではないか。途中で犯人を知らせちゃいけないだろう。そう思いながら、次の本を手に取り、読み始めた。もちろん1円の本。すると、やはりそこにも赤い丸。雅史は1円で買った本すべてに目をやった。すべての本に赤いまるで「こいつ犯人」と書かれていた。
 雅史は居てもたってもいられず、古本屋に言いに行った。
「ここで買った本なんですけど、1円の本ですけど。犯人の事がかいてあるんですけど」と文句を言った。すると店員が
「ああ・・・あれね。サービスです」
雅史は呆気にとられた。
「サービスですぐに犯人が分かるようになっているんです。時間短縮ですよ。」
と。雅史は泣きながら家に帰った。

                               おしまい

             ラーメン

 少し気だるい気候であった。暑いわけでもなく寒いわけでもない。
とりわけ、こう言う日はラーメンが食べたくなる。美味いラーメンが。
 商店街を歩くと少し行列のできる美味いと評判の店が何件かある。ラーメン激戦地区ではないが、そこそこにぎわっている。そしてその中でも空いていたラーメン屋に入った。
「いらっしゃい」の威勢のいい声で応対してくる。
メニューを見る。ラーメンセット1000円。中身は餃子とミニチャーハンがついてその値段。だから、それを頼むと、
「今、サービスでチャーシュー3枚追加できますがどうしますか」と訊かれ、すぐさま、「じゃあお願いします」と答えると
「サービス追加〜」と声をあげ、厨房へ消えていく。
しばらくすると注文したものが出てくる。意外とチャーシューがでかい。食べきれるか心配であったが、脂っこくなく後味さっぱりの美味いものであったので残さず食べきった。満腹だ。お腹を抱え、レジへ行く。
店員が「2000円です」と言う。財布から1000円札を1枚取り出そうとしている時だった。慌てて、「セットって1000円ですよね」と言うと
店員は「はいそうですけど」と真顔。
「だから1000円ですよね」と再度聞くと、
店員も理解したようで、
「ああ・・・サービスですね」とやっとわかってくれた気がした。だけどそれは違った。「だから2000円です」
なにがなんだか分からない。その様子を見ていた店員が
「サービスなんで」と指している文字を見た。
「サービス料・・・1000円」と。
仕方なしに2000円を払って家に帰った。
 
                         おしまい

             運転手つきレンタカー

 結婚10年目の記念にと旅行を計画した。余り裕福ではなかったが、そこそこ幸せを感じていた俺。当然妻もそう思っていた。娘が小学校に上がる前に旅行を楽しもうと言う事になり、計画を始めた。車のない俺は当然レンタカー。妻の薦めであの面白い企画をするレンタカー屋に向かった。
そこは運転手つきのレンタカー屋。これが当たり数か月先まで予約でいっぱいだった。これのメリットは疲れていても家まで送り届けてくれる。俺にとって夢のようなものであった。だから、そのプランを予約した。