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秋のような夏の日に

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朝方に寒さで目を覚ました。夕べは蒸していたのでタオルケット一枚で十分だったのに。薄手の布団にくるまってちょっとした幸せ気分で寝直しているうちに夢を見ていたらしい。友達以上に発展はしなかった女性とデート中だった。愛おしさに彼女を抱きしめた。彼女の唇が私の唇と合う。ああふわっと柔らかい感触。だが、彼女はすぐに離れてしまう。

場面は急に変わって私は彼女の家にいるようだ。彼女の父親も、そして妹がニコニコ顔だった。特に妹は興味深そうに見ている。どうやら私は養子になってこの家に住むことになりそうだった。彼女と一緒に庭から家を眺めている。かなり大きく、昔庄屋だったといったような古い家だった。?家の家の明け放たれた窓からテレビの大音量の音が流れている。ああ、毎日これをやられるのは辛いなあと思ったところで目が覚めた。

夏なのに低い気温が夏の終わりのような物悲しさも感じながら夢を反芻している。どうして彼女の夢を見たのだろうと思った。彼女の家に行ったこともない。私はどんな風に付き合いが終わったのかを想い出そうとした。

たぶん数ヶ月、友達として過ごしただけのひと。彼女は自分からは何も要求しなかった。肉体的にも精神的にもぐっと近くに寄ってこない人だなあと感じていた。ただ街の喫茶店、ゲームセンターなどで時間をつぶしていた。一番喜んだのは、当時一店だけ残っていた歌声喫茶に行った時は、かなり満足した様子で微笑んだ。私は彼女の笑窪の出来るその笑顔が好きだった。

「ねえ、私達ってどういう付き合い?」
ある日、喫茶店で彼女が言った。彼女には珍しい真剣な表情で。
私は、即答はできずに少し間を置いて「友達・・・だろうね」と言った。彼女は少し寂しそうにも見えたし、安堵したようにも見えた。

彼女は自分の気持ちは言わず、どうしてほしいのかも言わない。私が選んだ行き先でそこそこに笑顔があったし、会話もとぎれることはない。私は彼女とは合わないのかもしれないと感じていた。男兄弟ばかりで育っているので、女性の心理がわからない。だから、言葉も行動もわかり易いひとがいいと思っていた。たとえばあれが食べたい、あれが見たいといえば喜んで一緒に行動するだろう。そして私を好きになってくれているならば、一緒に歩いている時に手をつなぐ、あるいは腕にすがって歩く。そういう女性を望んでいた。

だから、「友達・・・だろうね」と言った時点で、付き合いをやめようという思いは強まっていたのだろう。その日は少しもやもやとした感情を抱えながらも普通にデートは終了した。そのあと、もう一度会ったような気もするが、もう記憶があいまいだ。

ああ、そうか、あの日も夏なのに秋のような涼し過ぎる日だった。それで夢を見たのかもしれない。今はどうしているだろうか。会って見たい気もする。裏切って分かれた元恋人というものでもなく、友達だったのだから。
作品名:秋のような夏の日に 作家名:伊達梁川