ブルーとホワイト
賃金格差
親父は安い労働力を求めて研修生を受け入れた訳ではなかった。物を創る労働者の賃金は何故ホワイトカラーの労働者よりも低いのだろう。まして公務員から比べると格段に安い。
丸山は彼女たちのためにも賃金の改革をしなくてはならないと決心した。彼女たちは金のために日本に来た。多くの犠牲を払い、将来の幸せを願い。それならば少しでも多くの賃金を支給したい。
丸山は親会社と工賃の交渉を始めた。不良品の許容範囲の引き上げと交換に工賃の値上げである。5パーセントから2パーセントに引き上げ、ロス分は製品代金を支払うと契約した。リスクもあるが、範囲内で収まれば2000万円の売り上げの3パーセントの値上げになる。60万円は大きい。しかし0.1パーセントの不良を出せば50万円は吹き飛んでしまう。仕事とはそのように真剣でなくてはならないと丸山は思うのだ。いずれブルーカラーの賃金向上につながるはずだと確信した。
工員たちにその事を伝え利益分は賞与で還元すると約束した。
べにかやあんずたちは黒い汗を流しながら製品を箱に入れていた。
何処にも逃げる事も出来ない彼女たちが笑顔で働けるようにと丸山は気を使った。べにかもようやく男の事は諦めたようであった。
丸山は彼女たちから金のために働くのではないという意識解放をさせてやりたかった。
大型の扇風機が暖かい風を送っている。人の気持ちで有れば嬉しいが、くそ暑いのに役立たずなと丸山は思いつつも彼女たちと働いている満足感に浸ってもいた。