ブルーとホワイト
研修生
夏のプラスチック工場の室温は40度を超える事もある。零細企業に冷房設備などは無い。70センチほどある大型の扇風機が飛行機の様な唸りをあげているが、その風は気休めにもならないほど暖かいのだ。解放されたサッシの窓から吹いてくる風の爽やかさにはとてもかなわない。
次々と成形される製品の繋ぎをニッパ切断し、ダンボール箱に入れる。丸山は36歳になるがまだ独身である。彼は6大学のなかの大学を出ていた。順調に行っていれば結婚もしていたはずであった。大手の生命保険の会社に就職した。そして5年で退職に追い込まれた。
給料は安く、体もきつい仕事ではあったが、物を創る喜びを感じていた。確かに生保も必要な仕事かもしれない。丸山が退職に追い込まれたのは、トレーダーでの損失であった。その・・千万円は丸山一人の責任ではなかった。チーフの指図であった。しかし実際の取引は丸山であり、上司は口頭注意を丸山にした。本来ならそのような軽い事では済まされないはずであった。丸山は有望な人材と見られていたのだ。
丸山はプライドよりもマネーゲームに疑問を感じ始めた。
退職をし親父の工場を継ぐことにした。親父は専務の肩書をつけたが、丸山は断り、工員から始めた。
丸山の工場は大手自動車の下請けの下、孫請けであった。それでも仕事が年間切れずにある事は魅力であった。自社でもその他に化粧台などの直受けもしているが、注文にバラツキがあり、計画が立たない。
親父は3000万円ほどの機械を入れ、中国人研修生を受け入れると言った。