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宝の地図

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 博物館の資料から、私の地図が書かれた1894年頃は、確かにこの辺りは当時川沿いだったようだ。写真がそれを証明している。『川ノホトリ』というのは軍隊の関係であるのは間違いないようだ。以前先生がこれを書いた人は「軍人とか堅そうな人」と言ったけど、そのような気がしてきた。
「この地図は戦争に関係する事なのかな?」
「まさか、本土であったのは空襲だけで、且つこれよりも何十年もあとのことだよ」
「そっかあ、じゃあ何なんだろう。やっぱり宝なのかな?」
 私は乙浜に来てから得た情報を整理した。地図のバツ印に何かがある、ここで有名なもの……。思い付くのは花火くらいだ。 
「川沿いか……、じゃあ当時の花火はこの辺で上がったのかな?」
「だろうね。そんな物語もあるくらいだからね。んで、どうかしたの?」
「ここからだったら綺麗だったろうな、って」
「花火は例年八月一日って言っとらんかったかのう?」
「私思うんだけど、この地図は明治二七年のだから、日清戦争よりも前のものじゃない?それでも八月一日に花火あげてたわけ?」
「言われたらそうだ、鋭いな、麻衣子探偵」
「へへーん」
 先生に褒められて私は鼻を擦った。
「ただね、乙浜の花火は江戸の終わりからあったって言うから、日付は後から慣例になったんだろう」
「この年の今日、花火が上がってた可能性はあるってことだ……」
 私は別の写真を見た。当時の乙浜の町並みだ。さっきまでいた乙城記念公園は山になっててお城が微かに見える。
 私は何故か時間が止まったようにこの写真を見つめた。教科書で見たことがあるような古い日本を思わせるその中に一軒ひときわ目立つ洋風な建物があって、それが私を釘付けにした。
「何かあった?」
 先生に肩を叩かれて私は現実に戻った。館内放送で閉館を案内するアナウンスが流れていた。
「この建物がスゴいなと思って……」私は写真の洋館を指差した。
「この喫茶店は今もそこにあるよ。地元じゃ有名なんだ。昔は花火が見れたって言うし」 
「明治時代に喫茶店があったんか?」おじいちゃんが驚いたように質問した。
「僕も調べた事はないですけど、日本人がコーヒー飲むようになったのは明治に入ってからでしょう、当時はモダンな店だったんでしょうね」
先生は時計をチラッと見た。
「行ってみましょうか、ここも閉館するし」
「私も何か飲みたーい」
「よし、じゃあ日没までそこで休憩しようか」
 さっきまで固まっていた私は二人を置いて、一番に博物館を出た。さっき古い写真で見た通り、すぐ近くにその喫茶店は見えた。写真でもそうだったけど、私の目にはその建物しか入ってなかった。

作品名:宝の地図 作家名:八馬八朔