宝の地図
丑 金庫
「麻衣子、この鍵で開けてくれんか」
私はおじいちゃんから鍵を預かった。冒険もののゲームのアイテムみたいな鍵だった、見た目だけでも思わず「伝説の〇〇」と言いたくなる。老眼で鍵穴がよく見えないおじいちゃんに変わって、分厚い土と鉄でできた大きな蔵の小さな扉に鍵を差した。いかにも古めかしい音を立てて鍵は回り、それから私はその重い扉を開けると、煙と埃が立ち込めて、真夏の直射日光が開いた扉の中に吸い込まれていくように見えた。
砂埃を振り払いながら私とおじいちゃんは蔵の中を見る。だけど埃と暗いのとで中はよく見えない。おじいちゃんの老眼鏡は埃で真っ白で、私はそれを見て思わず吹き出した。
私たちは蔵が光を吸い込むのをしばらく待って、ゆっくりと目を凝らした。すると蔵の中が段々とぼんやり浮かんで来るように見えてきた。おじいちゃんが昔私に教えてくれたように、歴史の教科書で見たような農機具の一部が蔵の外からでも見える。兄ちゃんが言うミイラはいないと思う。
「よし、じゃあ中に入ろうか」
「うん」
舞い散る埃もあらかた収まった。私は腰の悪いおじいちゃんを助けながら蔵の中へ入った。中に何があるのだろう、農機具の一部はさっき見えたけど、その他は?金塊とか宝石とか、はたまた秘密の階段とかないのかな?と最近プレイしたゲームのシナリオと繋がる筈のないシンクロをさせて、蔵の中の劣悪な蒸し暑さを忘れて期待に胸を踊らせていた――。