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とうもろこし

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「皮を剥きます。敷き紙はないですか?」
猫語じゃない言葉だけなのに なんだかとっても偉そうなキミの言葉にボクは従ってしまう。たまたまあった包装紙を床に広げた。その上に ごろんと五本のとうもろこしが転がった。
「おいしそうだね」
「とうもろこしは、鮮度が一番にゃん」
「へえー そうなの?」
「このひげが見分けるのに重要なのにゃ」
「キミの髭のようだにゃん」
「剃ったよ…… そんなわけにゃいー! 茶色のおひげがいいんだって で…」
キミが、もいだときの様子の身振りや とうもろこしを掴んで実演する。そして 皮の剥き方までボクに教える。
「こう? 何枚あるかな?」
「メッ! だめにゃん。全部剥がさないで おひげとひと巻残すのがこつ」
「そうなんだ」
なんだか たくましい。料理の先生に尋ねてきたらしい。
「でもにゃん…… 畑のおばさんはお湯が沸騰してからって。先生は水から茹でるのよって」
「違うの?」
「シャキシャキとジューシィだって どっちがいい?」
「どちらも してみたら」
「だにゃん」
キミは 五本のとうもろこしを抱えてキッチンへ入っていった。と思ったら戻ってきた。
散らかった皮を片付けにきたのだ。
(えらいなぁ… そんなことまで できるようになったのかぁ)
ボクは、親のような目をしているに違いない。そんな自分自身を心の中でげらげら笑ってしまいそうだ。
「ここの片づけはいいですよ。どうぞ次の作業を」
「ん。いいの…」
その眼差しとボクの頬に触れた唇で ボクのやる気は上がる。(可愛いなぁ、もう)

キミが、キッチンに戻って 鍋と深めのフライパンとを用意して、一方は水を沸かし始め、もう一方はとうもろこしを並べて水を注いで火に掛けた。
「あ。忘れてはいけないにゃん」
ひとりでバタバタとバッグの中から おそらく塩と思われる白い粉末を持ってまたキッチンへと消えた。

作品名:とうもろこし 作家名:甜茶