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ヤマト航海日誌

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2016.3.6 ヨンパチ、ナナニイ、イッチョンチョン



「刑事さん、ニュースを見ればネタに困ると出てくるのが振り込め詐欺の話ですよね。古舘伊知郎なんかが言うんだ、
『なんと巧妙な手口でしょうか。彼らは天才としか思えません』
『まったくです。これほどまでに優れた頭をなぜ犯罪に使うのでしょうね。彼らがその気になりさえすれば、どんな立派な仕事だって……』
とかなんとか。でも本当はどうなんですか。詐欺の成功率なんてプラモのスケールみたいなもんでしょ。48分の1だとか、72分の1だとか……残りの七十一人はすぐおかしいと気づいて警察に通報しちゃう。一度や二度たとえ成功したとしても続けていたらいずれ捕まる犯罪じゃないの。

あれが〈オレオレ〉と呼ばれた頃は一億稼いだやつもいたそうだけど、それは相手が〈ポリカルロフ〉や〈バッファロー〉だったからですよ。今〈88〉に行ってもひとり騙して二百万として、エースになって一千万円稼ぐ望みはほとんどないんじゃないんですか? たぶん三機か四機目を殺ろうとしたところでレーダー誘導の長距離ミサイルに追われて終わり」


「お前、無理矢理、古代進の話にしようとしてるだろう。『ヤマト日誌』だからって」


「と言うか、今日のは、山本の話ですけどね。『2199』の山本は、最初はすげえ長い髪で、あれでどうして宇宙服着てヘルメットをかぶる気なのかもわからない。加藤のコネで〈ヤマト〉に乗ると決まったけれど『その髪は乗艦までに切ってこい』と言われながらにグズグズでもしてたんか。

あれはそういう女にしか見えない……戦闘機の操縦なんか知らないのが髪でわかる。なのに自分はコクピットに乗りさえすれば撃墜王になれる気でいて、なぜか本当にそうなってしまう。古舘伊知郎の言葉を信じて、詐欺師になればカネがガッポリ、『おれはそこらのヘボと違って絶対捕まるわけがないぜえ』なんて思い込むバカみたいに……」


「振り込め詐欺は違法だって言いてえのか!」


「いや、どうでもいいんですよ。あんなもん、騙される方もバカじゃないですか。やつらの手口なんかぜんぜん巧妙でもなんでもない。振り込め詐欺師は頭のいいやつらだって? その頭脳を立派なことに使えばだって?

バカバカしい。あの連中は人の手口を模倣して、〈夢〉と〈時間〉という単語を入れ替えるくらのオツムしか持っちゃいませんよ。娑婆に出してもどんな仕事も勤まりっこありませんから、ムショに死ぬまで閉じ込めて刑務作業やらせときゃいいんだ」


「それは槇原敬之の歌だよ」


「ええと……でも、バカだから、捕まえると言うんでしょう。『騙される方も悪いんだ。騙される方が悪いんだ、騙されるのがいちばん悪い。だからオレより騙されるやつを取り締まれと言いてえな』、とか」


「わかってんじゃねえか」


「わかってないでしょ。ソレイホさん、そいつに対しても言うんですか、『だからってな』って」


「ソレイホと呼ぶな」


「だって名前知らんもの。確かに、詐欺は引っかかる方も悪いと言えるとこがありますよ。特に振り込め詐欺なんて、カモになるやつの方が悪い。

あんな詐欺を巧妙というのは、『2199』を〈リメイクを超えたリメイク〉と呼ぶようなもんだ。〈ぶっちゃん古代〉が『山本君は優秀だから、どこで何やらせてもすぐエースになれるだろうね』なんておだてて、バカがその気になっちゃうだけだ。

あんなものは実は〈桜花特攻〉で、四十八中四十七は捕まるもんだということを、古舘伊知郎がニュースで言わない。言うわけがない。マスコミにしたら悪いことが起きてくれなきゃ困るんだから。

だから一回たまたまうまくいったやつを『いい腕だ』と褒めたてる。次が72分の1で、次が144分の1で、五人騙してエースになる確率は700分の1のウォーターラインだなんてことは絶対に言わない。

冥王町では警察が『来たぞ! 土星市と同じやつだ!』と言ってワッと出てくるんだから、古代の盾になる者にはナナニイかイッチョンチョンの望みしかないが、古舘にはどうでもいい。山本は何しろ〈コスモレイ〉だからね。どうせ代わりはいくらでもいるんだ。だからどれだけ死んでもいい……」


「古舘を取り締まれって言いてえのか。だからってな」


「ソレイホさん、それですよ。どうしてそこで『だからってな』と言うんです? 確かにおれは、古舘なんか人間のクズで百害あって一利なしで吊るせば少しは日本が良くなると思ってますよ。それが本当のことだからね。

けれどあなたが『だからってな』と言っちゃったらおかしいでしょう。『だからってな』は相手の主張を半分認める言葉ですよ。法執行機関の者が使っていい言葉じゃない。

あなたは常に、犯罪者の言い分には『ふざけるな』と応えねばならない。『詐欺師よりカモになる方を取り締まれだと! ふざけるな!』とね」


「だからってな」


「ホラ、また言った。ましてやあなたは、あのCMで、先回りして言ってますね。『取り締まれって言いてえんだろ、だからってな』って、あれはなんです。どうしてあんな言葉が口から出るんですか。ここでもう何度も書いていますけど」


「って、結局、またその話か。読むやつはもう飽き飽きしてんじゃねえのか。こんなの書くより小説を進めたらどうなの」


「いーやまだまだ。だいたいあんたがおれに名前を覚えさすこともできないのが悪いんだ。だから、あんたがいちばん悪い。だってそうでしょ。たったあんだけの短い台本、演るより前にちゃんと読んだら、あのセリフがおかしいことに気づくはずなんだから。

なのに、あなたは気づかなかった。だから、おれはどこまでもあんたを追求するんだよ」


「そうかなあ、ええと、そんなにおかしいかな、このセリフ……」


「おかしいでしょう。詐欺に限らず、痴漢でもそうだな。痴漢の言葉に頷いてるのと同じじゃないか。それどころか、自分から先回りして言っている。

『あの女も触られて気持ち良かったはずなんだからあの女の方が悪い、だから罰しろと言いたいんだろう。もっともだ。その考えは完璧に正しい。だが、だからと言ってもだな……』

と、そう言ってるのと同じじゃないか。あの後にほんとはどう言葉を続けるつもりだったんです? 『しかし理不尽と思うだろうが、現行法は加害者だけに罪を負わせる』とか?」


「わかってんじゃねえか」


「ああ? 『わかってんじゃねえか』だとお? おい、ソレイホ。てめえホントに自分が何言ってるかまるでわかってねえらしいな。『だからってな』と言っちゃったらそう続けるしかねえだろうが! あのCMを振り込め詐欺や痴漢に替えたらそうなるのがわかんねえのか。

『ルールは破るためにある』とほざく野郎に『キミ、優秀です。』と言ってどうする。『2199』で古代・山本・岬百合亜の三人はルールを無視して勝手なことをしてもいいように出渕裕に設定されてる。テレビゲームやプラモ作りができたやつを『いい腕だ』と甘やかすとすぐそういう考えを持つ。自分は社会の決まり事を超越した存在だと……
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之