ヤマト航海日誌
で、そのうえで、書けばいいじゃん。〈ハーメルン〉にさ、原作を『コート・イン・ジ・アクト』として、「このサイトでは島田イスケの名を使っている自分のお気に入り作家が〈楽天コボ〉で個人販売している小説の、
【もし殺人を予知する超能力者が社会に多数現れたら、警察力で犯行を未然に防ぐ制度を立ち上げ行わなければならず、その廃止はしてはならない。廃止には能力者の強制移送と軍事利用の問題が必ず生まれることになり、無理にやればその国は恐怖政治社会となる】
との設定に感嘆し、これで自分も書いてみたいと考え投稿を始めます」と言って自作の小説を書いて出すなら卑怯なことはただのひとつもないわけだ。おれが京アニ放火犯なら「許さん。削除だ」と言うだろうが、おれは京アニ放火犯じゃないからそんなこと言いません。
むしろ、それ、大歓迎。だからこの場を借りてmin305さんに言うが、よければやってみませんか。現時点ではあなたが他の者達よりずっと先行してるのだから有利な立場にあります。おれの『コトアク』の設定を使って書いてみませんか。
おれのは今から三十年後の神奈川が舞台だけれど、東京や他の県ならいいんですよ。百年後の日本でもいいし、これから能力者が現れどんどん増えてくという今この令和でやるのもいい。
それにおれの設定を、いちいち全部守らんでいい。あなたの好きでいくらか変えて書いても別にいいんですよ。
たとえばジェームズ・キャメロンが『ターミネーター』を撮ったとき、ハーラン・エリスンという作家の小説をパクったなんて言ったがためにそのエリソンというやつに40万ドル取られたなんて話があるが、おれはそういうこともしません。
設定だけならご自由にお持ちになって結構です。日本でなく、韓国とか、他の国にしたっていいし、異世界を舞台にしてもいいでしょう。いろいろ考えちゃいるんですがね。日本は国が豊かだからこんなやり方もできるだろうが、貧しい国ではどうなるかとか。台湾の馮秋玉というのを名だけ出したけど、そんな話もいいよなとか。中東などでは予知があるのにテロで人が殺されている、なんて書いたがどんなだろうな、とか。
〈名無しの隊長〉が若い頃に阻む陰謀の話とか。相原美咲博士というのを主役にする話とか。警察庁特捜班の南が主役の話とか。
それから予知能力特捜官・前田奈緒の御蔵島での少女時代の話とか。いろいろとスピンオフができるんじゃないかと思うんだけど、おれひとりであれもこれもとできないじゃあないですか。
『敵中』だって最後までやはり書かねばという気もあるし、『ガゼラ1968』とか『びなす戦記』とか、やりたいことはまだあるしさ。
ですから、おれの設定で何かおもしろいものを思いついたら書いていいすよ。海外にはなんか知らんが『グレイ』というのが『トワイライト』というやつの二次創作だったとかいう話があるでしょ。日本では伊藤計劃という作家が、デビュー以前に『メタルギア』の二次小説をコミケで売ってたなんて例がある。
うん。それでいいですから。〈ハーメルン〉にまず出してさ。「これはイケる」と思ったら〈ハヤカワSFコンテスト〉とか応募していいじゃない。おれが「いい」とここに書いてるんだからいい。『虐殺器官』と同じとみなす。
もっともハヤカワコンテストなんて、タダでも誰も持ってかないようなもんしか選考をまず通らないし、エンターテインメントの在り方をわかってるのが本審査員の中にひとりもいやしないけど。それに創元とかもねえ。『妖精作戦』にあんな画つけて売るようじゃあ。
ダメだ、とは思うけど。どいつもこいつも、エンターテインメントの在り方がわかってないよな、まるっきり……まあとにかく、おれが「いい」と言ってんだからおれの設定を使って書くのは盗みにならないのです。
けど何よりも『クラップ・ゲーム』。これこそ〈悪魔のトリル〉じゃないかとおれは思ってるんだけど、できたら書いてみませんか。予知システムが廃止された恐怖政治社会の日本で、殺人予知能力を持つ少年が逃亡する物語。これをスリルとサスペンス、涙の人間ドラマとして描くことができたら、もう。
いいです。それはあなたのものです。そのトリルを喜んでおれはあなたに進呈します。あなたを〈ミスター・クラッ子〉と認めるものと約束します。
min305さんだけでなく、できたら誰でもそう呼んでやるが、けれどもまずは『コトアク』を全話買えよな。そこから始めるのがスジだしやれるわけないだろう。おれの『フェノミナン』にどんなことが書いてあるのか知らなくて、どうして書けるわけがあんのよ。
アイデアだけを盗み取ってハヤカワコンテストに応募し、「島田なんてやつは知らない。この設定は自分で思いついたものだ」と言おうと思ってるやつが相当いるんじゃないかと思うが、ま、その嘘は通らんね。もちろん塩澤が天皇だから成功するかもしれないが、塩澤が天皇なんだから早川の本になったって何千部かが刷られるだけで、うち半分は図書館に買われてただの一度も借りられぬまま〈ご自由にお持ちください〉コーナー行きだ。て言うか、来年のコンテスト、『もしトム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の映画「マイノリティ・リポート」のように殺人が予知されるセカイが未来で現実になったら』なんて題名でどうしようもないもんばかり何百編も応募されて「どうなってんの?」と下読みの選考員が言ったりして。〈楽天コボ〉では何も知らずに試し読みだけしてるやつが、もう何千もいるみたいだからあるかもしれんぞ。
受賞しても君は焼き殺されるかもな。受賞パーティー会場から、京アニ放火犯みたいなやつに後をつけられボボボボボだ。そいつはおれの『コトアク』を自身も盗んだことを忘れてすべて自分が思いついた気になっちゃっている。だからそいつに君は放火されるわけだ。
だいたいそんな考えじゃ、小鳥遊と書いてタカナシなもんしか書けない。音無響子にキミは生きてるんだと語るようなもんは絶対に書けない。このサイトにおれが夏頃、『コトアク』の〈1〉から〈5〉までの半分をどうして公開していたか、どうせわかってないだろう。でもあのときにいちばんアクセスを受けたのが『墨須夫妻』だったのは、当時見てたなら知ってるはずだな。
〈DL〉では全然読まれなかったんだけどね。半分も出していなかったから。社会性もいちばん低いから当然だ。
でも音無しでキュキュンと響くのはこれと思ったからここでは出したのさ。そのために〈1〉から〈4〉までみんな半分出して見せなきゃならなかった。
ハーラン・エリスンなんてアイデアだけの作家だ。塩澤快浩ただひとりが涙を流して読むだけで、一般人の心を打つものなんてひとつも遺していない。【未来からふたりの戦士がやってきて――】なんてアイデアよくあるもんで、日本の『ウルトラQ』だとかにもあったようななかったような。パクったからって本当はどうと言うほどのもんじゃない。