小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ヤマト航海日誌

INDEX|101ページ/201ページ|

次のページ前のページ
 

君ももちろんマークを付けない。君の場合は、人に教えて、相手がマークを付けるようなら、


「バッカじゃねえのかあ。お前こんなの、本気でいいと思うのかよ」


と言ってやりたいからだろう。『セントエルモ』に付けた彼と同じことになりたくないんだ。

あれの二個目にもなりたくない。人に話して、


「お前、〈二個目〉か! バッカじゃねえの?」


なんてことになるのは避けたい。

そういうわけだ。でも本当は、付けたいけれど付けられないんだ。そうだろう。『百個ぐらい付いてくれたら、101個目を付けてやってもいいんだけどな』――そういうふうに考えてる。でなけりゃ今に、こんなものを読んでないだろ。

今にこれを読んでる君は、たぶん人から、おれが他所(よそ)に出している図書館の本を濡らした話でも教わって、ここまでやってきたわけだろ。おれの『敵中』もほぼ読んでるし、『コート・イン・ジ・アクト』だって、試し読み分ぜんぶ読んだりしてんじゃないのか。

でも決して買う気がない。買う気がないのは、『買う気がない』と言うよりも、買って読む最初のひとりになりたくないんだ。そうだろう。これもやっぱり、『百人買ってみんながいいと言うようならば101人目になってやってもいいんだけどよ』と、そういう考えでいるわけだ。

だから今にこの駄文を読んでるわけだ。そうだろう。これはそうでないやつが読むログではありません。おれが今そのように書いてんだからそうですよ。

君はあれを買って読む最初のひとりになりたくない。二人目や三人目にもなりたくない。なるとしたら101人目だ。そのときまでは絶対買わない。そう心に決めている。

でなけりゃ今にこんなもん、人に教えずコッソリひとりで読んでたり、ひとりかふたりにだけ教えて相手がマークを付けたりとか買って読んだりしないもんかと窺ったりしないよな。マークについては百個付いたら101個目。電子本は百人買ったら101人目だ。そんなことにならない限り絶対手を出すもんかと決めてようすを窺っている。

後で『自分が二人目』とか『三人目』とか話したら、絶対、人にバカにされると考えている。ましてや〈ひとり目〉なんてことになったら、それこそ市橋達也のように、名を変え顔をブサイクに自分で造って逃げ生きるしかなくなるものと考えている。

君はそういう人間だ。だから今から人に言うセリフを決めているんだろう。


「まあこの島田信之ってのは、ボクが広めたようなもんだよね。ボクは島田が存在をまったく知られていない頃から知って読んでいて、『ひょっとすると』と思ってたんだ。で、何人かに教えてそれが……」

「ははあ」と、君はその相手に言われる。「で、百人が買って読み、みんながおもしろいと言うからそれで自分も読んでみようと思ったわけですか」

「そうだ。ボクが101人目だ」


カーッコいーい! なんてカッコいいんだオレ! と、君はそう思ってるんだろ。そうなったらオレは超カッコいいぞ! 世界でいちばんカッコいいぞ! と、そう考えているわけだよね。それなら絶対、人にバカにされたりしない。その相手から、間違っても、


「〈最初のひとり〉になれるチャンスがあったのにみすみす逃したわけですね。〈二人目〉、〈三人目〉になるのはもちろん、〈最初の十人〉のひとりとか〈最初の二十〉になるのもイヤ。あなたはサイトを退会した〈じぱんぐ〉なる人物に島田が何も言い返せず何もできないと考えてニヤついていた四人と同じというわけだ」


なんて言われることはない。

だから絶対101人目だ。それまで絶対買わないぞーっ!と、君は心に決めている。なのに友達に教えてもそいつが買わないということは、買って読む価値ないってことだ。つまり、やっぱりつまらないんだ。

君はそう思ってる。君とまったく同じ考えの人間が、いま二十人ばかりいる。

後からこれを知って読む人には、君を含んだ〈今の二十〉が全員そんなやつだというのがわかっていただけるわけだ。

やれやれ。君は利口だねえ。人の心理は不思議だね。市橋達也は〈ワグナー事件〉を起こす前、他人の財布を盗もうとして取り合いになり、相手にケガを負わせたことがあるという。人は目の前に十億円のヴァイオリンや、百億円の戦闘機が置いてあれば、それは自分のものだと思う生き物だ。だって見たからオレのものだ。オレのものになるために置いてあったということだ。

それを証明する方法はある。オレにはこいつの操り方がわかるのだ。知らなくてもわかる。わかるに違いない。だってこいつはもうオレのものなのだから――楽器も飛行機も女と同じだ。これはリンゼイ・ワグナーなのだ。操縦桿を手にした途端、〈彼女〉がオレに教えてくれる。そうよ、すごいわ、なんて人なの、ああ、あなたの腕は最高!

そういうことに必ずなるんだ! だから盗むぞ! 腕を見せれば、〈○皇様〉がきっと現れ言ってくれる。アッパレ! これはキミのものだ! 今日からキミが主人公だ!

だが十億のヴァイオリンに素人が手を触れるなどそれだけで言語道断だ。世の中には、〈整備を受けているとこだから動かしてはいけないもの〉と素人眼にもわかる戦闘機を勝手に飛ばしてオシャカにするバカが主役のアニメがある。ヴァイオリンの古い銘器もメンテナンスを受けるところだったりしたら、素人が迂闊に触っただけで壊れて二度と直らないことになるかもしれない。それは他人の所有物で、君が触れてはいけないとわかるものに手を触れるな。

現実社会で盗みが正当化されることなどない。君に『悪魔のトリル』は弾けない。こいつを追いかけ読んどきながら自信を持っていいとも悪いとも言えない君に、どうして人がいいと感じて読むものを書く力が持てるのかね。

君がおれを盗んでもどんなものも書けやしないさ。ひとついいことを教えてやろう。『おれにコメントしろ』とは言わない。君なんかが何を書こうとあの〈じぱんぐ〉と同じことだ。どうせつまらんコメントなら、ない方がマシというものだ。

だが、読者マークなら、付けても黙っていればいい。『セントエルモ』は取られちまったが、この日誌や『ゴルディオン』なら今は君が〈ひとり目〉になれる。『セントエルモ』に付けた彼がしょせんバカでやらないからね。〈いいね!〉マークを付ける勇気も彼にはない。中途半端な付け方するから余計みっともないザマになるんだ。

だからおれは、そんなやつはどうでもいい。けれども君は、付けたところで、人に言わなきゃ誰にもわかりゃしないじゃないか。

だから黙っていればいいんだ。誰にも言うな。人に言わずにコッソリと〈ウのウノ番〉になってしまえ。

それでだな、『君のつまらんコメントは要らん』と書いたが、しかしおもしろいやり方もあるぞ。〈いいね!〉を付けて、『俺がマークを付けました。俺です。俺がひとり目です! byミスター初っ子』とやるんだ。

で、人には黙っとく。君の友人が、


「誰だ、〈ミスター初っ子〉って! お前じゃないのか?」


と言ったとしても、


「違う。お前こそそうじゃないのか」

作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之