ぶどう畑のぶどうの鬼より
3 田舎の現実
シャワーは庭の
隅っこのホース
水洗トイレの
家なんて
村に3軒
あったかどうか
ヒールの高い
サンダルなんか
肥料の牛ふんに
めり込むだけ
百害あって
一利なし
どんな高価な
ドレスより
Tシャツとモンペが
重宝で楽ちん
ちょっと買い物
しようにも
コンビニなんか
10キロ先
裏山に入れば
携帯なんて
無用の長物
アンテナ1本
立ちゃしない
朝は起きぬけに
豚のキョンスクに
餌やって
お日さまと競争で
畑入り
夜は縁側で
星を見ながら
泥んこだらけの
農具の手入れ
雨が降る日は
畑仕事は休みだが
大雨になりゃ
話は別
ぶどうの雨よけに
大忙し
俺はとうに
慣れっこだけど
都会育ちの
おまえには
目がテンどころじゃ
なかったろ
9時5時勤務で
土日定休の
都会の会社じゃ
想像もつくまい
「ぶどうばっかり
可愛がって
人間は二の次三の次!」
むくれた
おまえの口癖を
耳ダコじゃ
すまないくらい
聞いたっけ
作品名:ぶどう畑のぶどうの鬼より 作家名:懐拳