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鉄の馬で日本を駆けろ!

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   八月十八日 大海原の夕陽


 午前6時、仮眠室の椅子の肘おきに置いていた目覚ましがピピピッとなった。疲れていたのか、となりで仮眠を取っていたビジネスマンらしきおっちゃんに起こされる。いつもなら周囲に迷惑かけずに一人で起きれるのだが、やっぱり長旅と沖縄の灼熱の太陽で少し疲れているようだ。
 
 今日はバイクも運休。朝からバイクをフェリーに乗せるだけで、あとは次の日の朝までは一日中船の上だ。そして、バイクも船着き場の駐車場に止めたままなのでエンジンをかけなくてもいいくらいだ。連日走り続けた我が相棒もかなりヘタってるだろうからしっかり休ませたい。これまで致命的なトラブルもなく走ってくれたことに感謝している。
 出発の準備を整えた僕は歩いてフェリーターミナルに戻り、単車をフェリー「なみのうえ」※に乗せると、二等船室に上がりさっそく根っ転がった――。

 今日一日は完全休養、朝の朝までは海の上だ。もとい「なみのうえ」だ。
 スロットルを握らない僕は地図を広げて今までの旅行を振り返った――。

   * * *

 西宮(甲子園)を出発して3週間と半分。いろんな人に助けられ、北海道から沖縄までの「日本縦断」は達成した。その間トラブルもあった。スピード違反、吸気系の不具合、熊本鹿児島間での台風12号……。それでもなんとかここまでこれた。
 挫折もある。行きたかったところ、日本最東端の納沙布岬、そして最南端とまではいかないけれど沖縄本島の南、宮古島、石垣島。金銭的にも日程的、体力的にもにも余裕がなかった。言い出したらキリがない。
 それでも、道中師匠である藤井さんと共に北海道を走り、行く先々でいろんな人の助けを貰った。この国の人は本当にいい人たちだ!一つ一つ、一期一会の出会いの積み重なりで、僕はここまでこれた。自分の力ではない。

 残りの行程はあと少し、僕は甲板から見える沈み行く夕陽に、残り予定一週間足らずの旅の安全と今までの感謝をした――。

 明日の朝には鹿児島に戻る。次の目的地は、そう、自宅だ。47全都道府県上陸を目指すので、途中四国地方にも寄り道はするけども、これからの旅路は家に帰る道となる――。

   * * *

   第三章「南へ!」 おわり 第四章に続きます。

 ※フェリー「なみのうえ」は快適な船旅でした。後日談ですが、平成26(2014)年、韓国船舶史上最大の沈没事故と言われる「セウォル号」はまさに日本で現役生活を終えて払い下げられた「なみのうえ」だったそうです……。