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俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(下)

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第16部 サムスン嫌いのサムスン



改名
本気だったのか

なあ サムスン
「サムスン」て名前の
いったい何が
気に入らない?

音の響き?
それとも漢字?

次々生まれた
孫3人が
立てつづけに
揃いもそろって
女だったと聞かされて
おじいさんが
腹立ちまぎれに
つけたって?

おまえの삼순(サムスン)は
「三珣」だろ?
銀の器を
3つも持った
娘なんだろ?

この世にそうそう
転がっちゃいない
素敵なものを
3つも手に入れて
生きていく
幸せな娘なんだろ?

腹立ちまぎれに
つけてくれるような
名前じゃないよ
罰あたりな

お袋さんが
OKだって?

芝居の真相
知ったその日に
よくも娘を
コケにしたなと
店こわす勢いで
ねじ込んできた

あの豪快な
お袋さんが
改名許してくれたって?

冗談にも
ほどがある

人のお節介
焼く暇あったら
二股の清算の方が先って
おまえは眉を
つり上げるけど

こればっかりは
「はい そうですか」なんて
引きさがれるか

それまで
遠慮しててみろ
おまえはさっさと
「サムスン」やめて
「ヒジン」になるのが
目に見えてる

だからこれだけは
言わせてもらう

なあ サムスン
この名前
俺は大好きだ

陳腐でも
野暮でもない
何よりおまえに
似合ってる

おまえが
なりたがってる
「ヒジン」って
たしか憧れの
ピアノの先生の
名前だろ

ヒジン先生を
悪く言う気は
さらさらないし
もう一人のヒジンが
目にちらつくから
嫌がってるわけでも
決してない

忘れもしない
記念すべき
ムースの味見の
次の日だ

事務所で初めて
履歴書眺めた
あの日から
俺にとって
おまえは「サムスン」

だからこれからも
「サムスン」でしか
ありえない

それはそうと
おまえは相当
むくれてた
出逢ったころから

「サムスン」の名の
惨めさが
他人にわかって
たまるかと
むくれついでに
俺つかまえて
とばっちり

陳腐な名前の
代表みたいに
「サムシク」と当てつけて
溜飲下げた

以来おまえは
笑っても怒っても
人の顔見りゃ
サムシク サムシク

いいかげん
自分の本名
忘れちまう

でも
それが不思議と
これっぽっちも
嫌じゃない
何でだかわかるか?

そう呼ぶのが
他でもない
おまえだから
おまえの声だから
ただそれだけ

笑えるくらい
単純だろ?

女に「好きだ」の一言も
言えないような
呆れた男の
言うことなんか
気にするなって

改名でも何でも
したけりゃひと思いに
してしまえって

天国のおまえの
親父さん
言うだろうか?

いや
万一親父さんが
許したって
俺は絶対
許さない

俺が好きなのは
「サムスン」と
言う名のおまえ

それ以外は
死んだってお断りだ