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ガガーリン
ガガーリン
novelistID. 50570
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Korean Flower

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 それにも関わらず、神などいないなどと信じてマンモンを崇拝し、神の子を憎しみに満ちたデーモンに変えてしまう「この世がすべて」主義。マンガもマスコミも堕落した、性的快楽があたかも現代の当たり前の風潮であるかのように描いている。表面的に人当たりのいい「○長 島○作」は女とセックスをして出世するという、なんともわけの分からない成り上がり方をする。「あしたのジョー」や「巨人の星」で貧しい中にも、高い精神性を保持して出世していったマンガで育った私にとっては嫌悪感すら感じる。そのような「この世がすべて」主義の中で、神の子としての資格を持つ人間は、情報の嵐の中で堕落し、サル以下の野獣に変貌してしまうのであった。
 こうしている間にも、例の20歳すぎの、色白の、顔つきのひきしまった、あの乙女が、どこの誰ともわからないメイド・イン・ジャパンの野獣どもの暴力的ピストン運動に、涙ながらに、耐えている姿が目に浮かぶ。神の怒りは頂点に達していた。
「神よ、闇の勢力が神の子供たちを、ダニを一つ一つ、つぶすかのように、闇へと一人また一人と引き込んでいく姿が目に浮かびます。私も、いつ闇の勢力に引き込まれるか、見当がつかない状況です。闇の勢力と闘うか、あるいはそれに引き込まれてしまうか、私の選択枝はこの二つしかありません。闇の勢力に引き込まれないためには闇の勢力と闘う以外に、私にはなすすべがありません。年は20歳すぎの色白の、顔つきの引き締まった、あの韓国なまりの日本語を話していた乙女が、暗闇の底から私に訴えてくるのです。声にならない、ただ涙でいっぱいの悲鳴と絶叫と嗚咽が、私の全身につき刺さってきます。」
韓国の乙女よ、私は今夜も憂鬱だ。表面だけ、現象だけが現実であろうか。あの時、あの繁華街で、私に「オニイサン、ヤスクシテオキマスヨ」と声をかけてきた、あの例の20歳すぎの、色白の、顔つきのひきしまった、韓国の乙女。あの美しい民族衣装チマチョゴリを身にまとう民族の末えいが、この日本という国で売春をさせられている。あの太平洋戦争の手痛い教訓は、日本人にはまったく教訓にはなっていなかった。悪意に満ちた欲望の罪業をまたしてもわれわれは、さらに増し加える。
私が、以前、東京から大阪に帰って来たときのことだ。私は大阪の風景を見ても美しいものが何もないのに愕然としてしまった。毎日、砂をかむような日々を過ごしていた。大阪の父のマンションに帰ってきたものの、周りに見える風景は巨大病院群が私の母校に隣接し、あるいは乗用車がメタリックなそのボディで交通弱者である私に向かって、その刃をむき出しにするのであった。排気ガスと焼肉の煙の臭いという、なんとも生きた心地のしない、その匂いで、絶望感に打ちひしがれていた。
私は30歳代前後のころ、商店街の入り口付近にあるコンビニに寄っていた。そこにも、あいかわらず大人の悪徳を漂わす、アルコール類やタバコが、子供時代にその風景に嫌悪感をもよおしていた私を暗い気持ちにさせていた。私はアルコール類やタバコには人間の心も身体も破壊してしまう魔力があることを、高校生だった私は本能的に知っていた。父はアルコールもタバコも、平気であった。おそらくは職場で誰かからすすめられて、その習慣がついてしまったと思う。いつのまにかその魔力なしに生きることができない身体になっていた。本能的に私は父の身体に関して不安を感じていた。
 その後25年が経過して、医学が進歩した現在にはCTスキャンというものがある。それの胸の断層写真を見せられた。父の肺の細胞はつぶれて真っ黒になっていた。これはタバコが原因であると医師は私に説明した。肺気腫ということであった。
 コンビニでそれらの人間を破滅へと追いやる魔力をもつアイテムに取り囲まれながら私は身体中にその魔力の誘惑をひしひしと感じていた。私はピーナッツを買おうと探し求めていた。その時である。突然、韓国の伝統衣装である、チマチョゴリを着たうら若き、15歳ほどの乙女が、レジで支払いを済まそうとしていた私の目に飛び込んできたのであった。私は、ハッとさせられてしまった。私はこのチマチョゴリという伝統衣装が純粋に美しいと感じていたのであった。この大人の悪徳に満ちた繁華街の中で、ひるむことなく輝いているチマチョゴリを着た15歳の乙女。私はなぜ、大阪の街中の繁華街にこのような美しい民族衣装を着たうら若き15歳の乙女がいるのか、よく考えた。そういえば近くに朝鮮学校があるのを思い出した。何のことはないその朝鮮学校の生徒の制服なのであった。私は、少年時代、なんとなくではあったが、朝鮮人という言葉が日本人よりも格下であるという人種差別的偏見を周囲から受けていたことは否定できない。そして日本人のこの優越感と引き換えに韓国人は汚い人種であるとの意識も植えつけられていたように思う。しかし、どう見ても今、私の目の前にいる民族衣装、チマチョゴリを身に着けたこの15歳のうら若き乙女は、明らかにそのような、私に植えつけられた汚いイメージとは明らかに違う。この、大人の悪徳に満ちた薄汚れた繁華街で、ひときわ、強力な閃光を放っている。このうら若き15歳のチマチョゴリの乙女が、汚泥に浮かぶ蓮の花のように輝いて見えていたのであった。
 しかし25年を経た2014年、また今夜も、例の乙女、年は20歳すぎの色白の、顔つきの引き締まった、韓国語なまりの日本語で「オニイサン、ヤスクシテオキマスヨ」と、どこの誰とも知らない日本人の善人面したサラリーマンたちに声をかけているのであろうか。日本人のサラリーマン、大阪のサラリーマン、大声でわめき散らして、4,5人でかたまり、一人で歩く人を犬っころでも蹴散らすかのように団体で歩く企業戦士。あの下半身は大阪の某市長がこの大阪にカジノを導入するとか言っている下半身と同じイチモツを持つ。韓国の乙女の美しさを蝕んでいく、ハデスの帝王とその手下どもがブクブクと太っていく。
作品名:Korean Flower 作家名:ガガーリン