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You and I and ...?

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 結局、俺の吹き出した粒子状の唐揚げが舞岡にかかってしまって大騒ぎになったり謝り倒したりしていてその時はうやむやになってしまった。
 頼んでもいないのに吉野が持ってきた情報によると。
 舞岡千鶴。二年八組。ウチの学年が全八クラスで俺が二年一組だから隅と隅であるらしい。それでいてウチの高校は三年間クラス持ち上がりの為、知らなくて当然といえば当然だ。
 成績は中の中。男子の人気もそこそこ。目立つタイプではないけれど、小さく可愛らしいというのが周囲の評価。
 確かに、結構可愛かった。
 ……それにしても。

「眼鏡のない顔が好きです! ……かぁ」

 呟きが、下校のチャイムに被って漏れた。
 俺に対する告白の仕方はやっぱり眼鏡が基準なのか。
 眼鏡をかけた俺。
 眼鏡がない俺。
 ……なんか釈然としない。

 と。

「……片倉君」

 昇降口のロッカーにもたれるようにして、舞岡が立っていた。
 色素の薄い髪が夕焼けの橙に染まっている。

「あの、わたし……」
「悪かったな、今日は。詫びに何か奢るけど」
「え……」

 舞岡の顔がポカーンと呆気にとられた。と、同時に。

 ぐきゅるるる~ん

 小さな体からは考えられないような音で、腹がなった。
 もちろん、俺じゃない。俺だったらこんなに冷静にしてられない。
 舞岡だ。

「ぁ……」
「……」
「ぁぁ~」
「……」
「ああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」

 どんどん白い顔が赤くなっていって、沸騰。
 沸騰の勢いに任せてそのまま走っていってしまった。
 俺は一人、取り残される。

「……追いかけるべきか? これ。……追いかけるべきだよな。これ」

 自問自答。
 と、同時に笑いがこみ上げてくる。

「ぐきゅるるる~んって……」

 何かの鳴き声のようだった。
 本当に何か飼ってるわけじゃないよな? 腹の中に。
 とりあえず、上履きを革靴にかえて追いかける。
 昇降口をでて、校門へ続く坂を軽く駆け足で降りていく。
 と、校門のすぐ側で方をゆっくり上下させている舞岡が見えた。
 ……息きれるの早すぎだろ。

「おい」
「ひゃあ!」

 声をかけると、小さな舞岡の背中が大きく跳ねた。

「か……かかかかか片倉君!」
「スタミナねぇな。お前」
「こ……こここここここのたびは大変お見苦しいところをお見せしまして大変遺憾であります!」

 顔を真っ赤にして、舞岡は何かよく分からないことを言っている。

「弊社の代表としましては、深くお詫び申し上げます!」

 いつから会社になった。
 目の焦点あってねぇぞ。大丈夫か? こいつ。
 漫画で言うなら目が渦巻き状になったかんじ?

「腹へってんのか?」
「肯定であります!」
「じゃ、ラーメンでも食いに行くか」
「我が輩感激の極み!」

 ……こいつ、マジで面白いかも知れない。
 本当にスタミナはないみたいでフラフラになってしまった腕を掴む。
 ……細い。
 持ち上げてみた。
 ……軽い。
 俺の身長が170後半で、こいつの身長が150……いかないくらい。
 並ぶと間に30㎝物差しが入るな。
 改めて小ささを実感してしまった瞬間だった。

「……行くぞ」

 なんだか気恥ずかしくなってしまって足を速めた。

作品名:You and I and ...? 作家名:神納舞