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真夜中の舞踏会

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 馬車が走る。
 月の光も届かない森の中を二頭の白馬が駆け抜けてゆく。

 黄金色に輝く門が開く。
 広大な庭園の中央には円形の噴水が置かれ、その虹色の水が小川となって流れ出ている。

 君はダイヤモンドの橋を渡る。
 足元をサラサラと流れる水が純白のドレスで着飾る君を映し出していた。

 舞踏会の夜。
 人々の悦びの輝きが極限にまで高められる時、妖しく美しい幻想世界が広がってゆく。

 白と金の壮麗たる宮殿。
 冷たき窓の向こうに男と女達の影が浮かぶ。微かにヴァレンの音色と歓喜の声が聞こえてくる。

 君は白き扉を開く。
 シャンデリアがこの世を照らす。オーケストラは世界に命を吹き込み、歌姫が華麗に微笑む。

 グラスに注がれた赤きリキュール。
 それは蕩けるがごとくの甘美の味わいで君の身も心も熱くしていく。
 
 紳士であった男達と淑女であった女達が舞い踊る。
 堕ちてゆく悦楽に彼らの瞳は輝き、彼女達の眩い金髪が大きく波打つ。

 君は踊らない。
 俯く君の前を麗しき男女が通り過ぎてゆく。君の瞳には涙が浮かんでいた。

 黄金の鏡が君の姿を教えてくれる。
(嫌だ) 君はそう思った。(私は此処に相応しくない) その確信に唇を噛んだ。

 鏡に映る君の横に現われた美しき青年。
 彼は丁寧に会釈すると君に手を差し伸べる。「私と踊って頂けませんか?」

 君は青年を見る。
 胸の高鳴りが身体全体に響いている。その唇が自然と開いてゆく。それは、恋の始まり。

作品名:真夜中の舞踏会 作家名:大橋零人