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三部作『三猿堂』

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 梅雨の合間の良い天気。夏も近付き、朝からほんのり暑い。店主は南向きの入り口のカーテンを開けて店に光を入れた。今日は土曜日、背広姿のビジネスマンがそれぞれおしゃれした人たちの並みにうずもれる。
 店先の歩道を掃き掃除していると、店主は先日商品をお買い上げになったお客様が男の人と腕を組んで歩いている姿を見かけた。眼鏡のフレームに夏の日光が当たって店主の目に飛び込む。
「ほぅ、よかったよかった――」
 店主はそうつぶやきながら「三猿堂」の看板を扉の上に引っ掛けた。
 
「恋は盲目、ですなぁ」

 店主が道路を挟んで向こうにいるカップルを見てホッとして
「さて、次のお客様はどんな方でしょうか……」
と続けてホウキを取って、店先の通りをきれいに掃除しはじめた――。



     ストーリー1 眼鏡   おわり   ストーリー2に続きます。
作品名:三部作『三猿堂』 作家名:八馬八朔