暁
ぬわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
私はっ!
何をっ!
言って!
いるのかっ!
ほら、案の定目をぱちくりとさせて、何言ってんだこいつ、的な目でこっちを見ているじゃないですか!
「いや、あのっ、これは──違うくて」
やばい、動揺のあまりよくわからない言葉遣いになってしまった。
取り繕おうにしても、どういう言葉にすればいいのか全くわからない。
私はどうしようかとおろおろとしている間に、さっきの言葉を思い出す。
あれ、もしかして、私、今の結構きわどい事言っちゃった?
頭に昇った血が、一気に引いていくのが解った。
毎朝=朝食を一緒に摂る間柄=という事は──言わずもがな。
「ぷっ……」
おろおろとしていると、彼女が突然噴出した。
「えっ?」
「いや、何を言い出すのかと思えば……全く君らしい言葉だよ」
彼女は笑いながら立ち上がり、お尻についた砂埃を手で払った。
「君の言葉に対する私の答えは、残念ながら“ノー”だね」
当然の答えだろう。いきなり毎朝コーヒー淹れろなんて、無理な注文だって解ってる。
そしてそれが何を暗喩しているのかも。
私ってば勝手に舞い上がって勝手に自滅してる。
「だってさ──」
彼女は私に向かって手を差し出して言った。
「朝食のコーヒーを淹れる係も交代制でしょ?」
そう言って、にこりと微笑んだ。
私はその言葉を聞いて、彼女の手を取った。
「……ばか」
精一杯考えて出した言葉が、これしか出てこなかった。
「さ、そろそろ行こう。もうすぐ夜が明ける」
「うん、そうだね」
私たちは徐々に明るくなる空を確認して、またあの場所へと戻る事にした。
もちろん、先程繋いだ手はそのままだ。
いつもと違う熱っぽさを感じながら、彼女との距離が縮まった事を確認していたのだった。
「洗濯は?」
「もちろん、交代制」
「お風呂掃除は?」
「交代制」
「夕食は?」
「交代制」
「行ってきますのちゅーは?」
「こうt……な、何を言ってるんだ君は!」
「交代制じゃないの?」
「……交代制」
まだまだ決める事はたくさんありそうだ。