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私を呼ぶ声

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私のパニックが頂点に達しようとしたとき、私の背後でドアが開く音がした。
振り返ると、玄関にレジ袋をぶら下げた母が立っていた。
家のドアが開いたままで、外からの強烈な光を背負った母は、私の目にはまるで輝いているように見えた。
母は私を見上げると、にっこりと笑った。
「ゆうこ、帰ってたのね。遅くなってごめんね。おやつ買ってきたから、一緒にお茶にしよう。」
その母の声で、私は呪縛が解けたようにくるりと体の向きを変えると、母に向かって階段を駆け下りた。
転げ落ちるような勢いで階段を降り切ると、私はそのまま母に抱き着いた。
母は一瞬よろけながら私を受け止めた。
「どうしたの、何かあったの。」
母の声に、私は顔を上げて階段を振り返り、2階を見上げた。
2階の廊下の天井を覆い尽くしていた暗闇が、あっと言う間に退いて行くのが見えた。後に残ったのは、いつもの薄明るい2階の天井だった。
と同時に、私は小さな舌打ちの音を聞いた気がした。



作品名:私を呼ぶ声 作家名:sirius2014