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俺をサムシクと呼ぶサムスンへ(上)

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第8部 甘っちょろいかどうか



意地張るなってば
無理して
作らなくたっていい

あんな
婚約パーティーなんて
掃いて捨てるほど
予約は来る

1件ぐらい断ったって
うちは潰れやしないって

よりによって
自分をふった男の
婚約パーティーなんだぜ?

その会場で
いそいそケーキを
作るような女が
どこにいる?

傷口に
自分で塩を
塗りこむような
もんだって

これほど親切な忠告も
あんたは
聞く耳持たなかった

「あんな野郎と3年も?
殊勝なこった
学習効果がなさすぎる

相手の男を
信じりゃいいって
もんじゃない

甘っちょろすぎて
話にならない」

ケーキ屋からの帰り道
俺の皮肉に
あんたは猛然と
噛みついた

地下鉄の通路だった

夕方の
ラッシュどき
肩と肩が
ぶつかるほどの雑踏で
あんたは俺を
睨みつけて
仁王立ちして
動かなかった

速射砲だった

「誰が甘っちょろいって?
1度だって
甘っちょろく
人を好きになんか
なったことない

いつだって
本気だったし
心の底から真剣だった

始まるときも
終わるときも」

じれったすぎる
そういうのを
お人好しって
世間じゃいうんだ

じゃあ訊くけど
サムスン

恋愛って
ボランティアか?
自分さえ真剣なら
絶対 後悔しないのか?

自分だけが
一方的に
義理がたきゃいいって
もんでもないだろ?

こっちがどんなに
誠心誠意 尽くしても
尽くした相手が
卑怯だったら?

こっちがどんなに
恋焦がれても
相手は
痛くもかゆくもなくて
鼻で笑って
バイバイされたら?

そしたら
ふつうの神経なら
自分を責めるし
相手を恨むし

もう二度と
恋だの愛だの
浮かれたりするもんかって
やけにもなるだろ?

ちがうか?
そんなの俺だけか?

そう言いたかったけど
黙ってた

黙ってるのは
負けを認めて
しまうみたいで
嫌だったけど
意地でも何も
言わなかった

今ここで
こんな人混みで
あんたに怒鳴って
反論したって
ただの女々しい
八つ当たり

それぐらい
俺だってわかってた