死滅回遊魚の鳩尾
てめえの頭ん中を見せてみろ!
「もうお前の頭の中なんか見たくもねえ!」
クラスメイトである彼がそう吐き捨てて足早に去っていきました。
顔こそ見覚えのあるような気がしますが別段親しくない故か名前は全く思い出せません。
この世界では本人の許可さえあれば誰でも頭の中、即ち思考を見ることができるのです。
見たいと言ったのは彼なのに、それなのに、何故彼は恐れおののいたのでしょう。
私はありのままを見せただけですのに。
深い水色の海の水面すら見えない中を空気の泡を纏いながら沈んでいきます。
素肌に感じる水の流れで沈んでいるのだと気付きます。
呼吸はしませんが苦しくはありません。
明るさの変わらない海の中を沈んでいると突然やってきた鮫に下半身を食いちぎられてしまいました。
一瞬だけ視界が赤く染まりましたが、すぐに元の深い水色に戻ります。
その間にも血は流れつづけ、その分だけ周りの海水が私の体に流れ込み、そのうち体は海水と同じ色になってしまいました。
相変わらず纏っている空気の泡だけが私の存在の証明です。
私は鮫に食べられた自分の下半身に思いを馳せます。
今頃私の下半身は自分の血の色と同じに染まっていることでしょう。
そしてそのまま鮫の一部となってもう二度と戻ってくることはないのです。
私は目を閉じ、クジラの口の中へと沈んでいきました。
それとも、ジャングルの中をひたすらに走り回り、ちょっとした油断の末に有り得ないほど巨大な食虫植物に食べられてしまう方が好みだったでしょうか。
「もうお前の頭の中なんか見たくもねえ!」
クラスメイトである彼がそう吐き捨てて足早に去っていきました。
顔こそ見覚えのあるような気がしますが別段親しくない故か名前は全く思い出せません。
この世界では本人の許可さえあれば誰でも頭の中、即ち思考を見ることができるのです。
見たいと言ったのは彼なのに、それなのに、何故彼は恐れおののいたのでしょう。
私はありのままを見せただけですのに。
深い水色の海の水面すら見えない中を空気の泡を纏いながら沈んでいきます。
素肌に感じる水の流れで沈んでいるのだと気付きます。
呼吸はしませんが苦しくはありません。
明るさの変わらない海の中を沈んでいると突然やってきた鮫に下半身を食いちぎられてしまいました。
一瞬だけ視界が赤く染まりましたが、すぐに元の深い水色に戻ります。
その間にも血は流れつづけ、その分だけ周りの海水が私の体に流れ込み、そのうち体は海水と同じ色になってしまいました。
相変わらず纏っている空気の泡だけが私の存在の証明です。
私は鮫に食べられた自分の下半身に思いを馳せます。
今頃私の下半身は自分の血の色と同じに染まっていることでしょう。
そしてそのまま鮫の一部となってもう二度と戻ってくることはないのです。
私は目を閉じ、クジラの口の中へと沈んでいきました。
それとも、ジャングルの中をひたすらに走り回り、ちょっとした油断の末に有り得ないほど巨大な食虫植物に食べられてしまう方が好みだったでしょうか。