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氏本 誠志郎の不思議な絵巻

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子供「大お祖母様〜」

婆ぁ「にゃ?にゃんだい?」

子供「学校でね、家の歴史について調べてこいって言われたの」

婆ぁ「へぇ〜そうにゃんだ」

子供「うん!だからね、家の歴史を教えてよ!」

婆ぁ「じゃあ、辻本家の歴史の成り立ちから話そうかにゃ〜・・・」

婆ぁ「時は平安、辻本家初代頭首様のお話にゃんだにゃ〜・・・」




女「清隆様!また犠牲者が・・・」

清隆「何!?またか!?」

私の名前は井之上 清隆(いのうえ きよたか)
このF国(こく)の国司(こくし)だ
因みに「国」これはこれを聴いている人達にわかりやすく言うと、今で言う県みたいな物である
読みは「国(くに)と書いて「国(こく)」と詠む
そして、国司(こくし)とは・・・厳密には違うが県知事みたいな役職だ
さて、話を戻そう
私はいつも通りに事務仕事をこなしていた
そんな時だ、私の元に身も凍らせる知らせが入ったのだ

清隆「例の疫病か?」

女「はい、高熱を発症した後、熱が引かずそのまま・・・」

清隆「これで何人目だ?」

女「如月(きさらぎ)に入ってからすでに20人です」

清隆「20人か・・・」

F国は今国興しの真っ最中である
この国興しは最初は順調に進んでいたが睦月辺りから謎の疫病が流行りだした
症状は3日から7日ほど高熱が続きその間寒気や頭痛などが続き、そして死に陥る
主に死ぬのは子供や老人で若者はこの疫病にかかっても死にまでは至らない

清隆「このままでは国興しに支障が出るな・・・」

女「清隆様、確か山奥に陰陽師が住んで居たはず、その陰陽師に協力を仰ぐというのはいかかでしょうか?」

清隆「陰陽師か・・・そちはこの流行り病が物怪類の素と考えるのか?」

女「御意」

清隆「・・・」

女「労働者達の中にはこの流行病が妖のものだと言う者まで出てます」

清隆「わかった。その陰陽師という者の所まで案内をしてくれ」

女「御意」

この時私は陰陽師という者は信頼していなかった
陰陽師といえば天皇に媚びへつらうのが主な仕事みたいなもので、そこら辺に居る貴族達と変わらない印象が有るからだ
しかし私は知らなかったこの陰陽師との出会いが今後大きく私の人生に関わってくる事を・・・・

女「ここです、清隆様」

清隆「ここか・・」

山道を一時間ほど進んだ所にその家は有った
その家は家と言うよりは廃屋に近い有り様でとても人が住んでいるとは思えない有り様だった

清隆「誠にここか?」

女「・・・お、恐らく」

清隆「・・・」

女「如何なさいます?」

清隆「ここまで来て引き返せるわけなかろう?」

気味が悪い雰囲気が漂っているが私は意を決して戸を叩く


清隆「誰かおらぬか!?・・・だれかー・・・」

???「にゃあー!!そんなに強く戸を叩いちゃダメェ!!」

清隆「?」

声が聞こえたと思った時だ

清隆「!?」

清隆「ぬわぁ!」

私は倒れる戸を避けることが出来ずに下敷きになってしまう

女「清隆様!」

???「にゃにゃ!?貴殿が戸を強く叩いたのですね!?」

女「違う!それより其処を早くどかんか!」

???「にゃんと!?にゃんげん風情がこのすず様に指図するとにゃ!?」

すず「どうやら、すずの力を見せつけにゃいといけにゃいみたいだにゃ・・・」

???「すず、やめんか」

すず「にゃ!?」

すず「主様!このにゃんげんがすずを馬鹿にしたのです!今こそすずの力を・・・」

女「っな!」

???「すず、取り敢えずそこから退くがいい。戸の下敷きになっている客人が今にも死にそうだぞ?」

すず「にゃ?」

女「清隆様!」

私はようやく戸の下から助けだされる

???「家の者が失礼した、怪我はないかね?井之上清隆殿」

私の目の前には一人の男とも女とも言えない者が立っていた
これが私と氏元 誠志郎(つじもと せいしろう)との出会いである

清隆「主が氏元 誠志郎(つじもと せいしろう)か?」

誠志郎「左様、私が氏元 誠志郎で御座います」

誠志郎「立ち話も何ですから、中へどうぞ」

私は誠志郎に促されて家と呼ぶにはあまりにもお粗末な廃屋に案内される

清隆「・・・広いな」

誠志郎「結界を張って有りますがゆえ。外から見ると廃屋に見えてしまうのです」

廃屋の中は外見から想像は出来ない程立派な寝殿であった

すず「主様はそこら辺にいる陰陽師とは違うんよ」

清隆「そうなのか・・・陰陽師といのはどうも胡散臭く見えてしまってな」

すず「にゃ!?貴様!!主様を愚弄するというのかにゃ!?」

すずと言われた童女が顔を真赤にして怒る
ここで、このすずという少女の特徴を語っておこうと思う
すずと言われてる少女の身長は四尺(約120CM)くらいだろうか?
とても可愛らしい童女であるが・・・・
普通とは違うものがこの童女に生えて居るのだ
それは
猫耳と尻尾である

清隆「誠志郎殿、この童女は主の子か?」

すず「にゃ!?」

誠志郎「・・・っは?」

私達の間に言い寄らぬ空気が流れる・・・

清隆「何かまずいことでも言ったか?」

誠志郎「子とな・・・くっくっく・・子・・・」

すず「はにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ・・・子・・子!すずが・・・主様の・・・」

笑いをこらえる誠志郎殿と顔を赤面させて俯くすず

すず「にゃんげん!!貴様は良いことを言った!!特別にゃ!!すず様をにゃまえで呼ぶことを許可する!!」

清隆「さ、左様か・・・」

誠志郎「子か・・・確かにそれに近いものではあるな」

清隆「違うのか?」

誠志郎「まぁ、その話は追々ということで」

清隆「?」

何故か誠志郎殿はお茶を濁してしまった
何か知られたくないような事でも有るのだろうか?
そのような事に思いを馳せていた時だ
目の前を歩いていた誠志郎が足を止めた
どうやら客間についたようだ

誠志郎「すず、清隆様とお付の方に茶を」

すず「は〜い」

すずはバタバタと客間から出て行く
落ち着きの無い娘だ
一体どのような教育を受けてるのだろうか・・・・

誠志郎「さて、清隆様。私に話とは?」

清隆「うぬ、そちは今この国に起きている流行病を知っているか?」

誠志郎「風のうわさ程度には」

清隆「なら話が早い。主にこの流行病を鎮めて貰いたい」

誠志郎「お言葉ですが、それは医師の生業。私は専門外というもの」

清隆「実はな、この流行病を妖かしの所業だと言う者までおるのだ」

清隆「魑魅魍魎(ちみもうりょう)を退治するのは主ら、陰陽道に通じる者の生業では無いのか?」

誠志郎「清隆様は勘違い為されてるようだが、本来我々陰陽師と言うのは占筮(せんぜい)や地相を職掌(しょくしょう)するのが本来の役目」

誠志郎「魑魅魍魎(ちみもうりょう)や妖かしなどの類のの者など専門外もいい所」

清隆「そうは言っても今ではそれら以外にも祭祀や占術(せんじゅつ)などもやっているではないか」

誠志郎「では、清隆様は今回の流行病はどのようにお考えで?」

清隆「やはり、民の者達が言っているように妖かしが」

誠志郎「成る程、もし妖かしが原因だとお考えであるならばそれは勘違いと言うもの」