桜の学校
さび付いた鉄棒。乗る部分が取り外された回旋塔、たくし上げて固定されているブランコ。
今はもう使えない遊具を取り囲むようにして伸びた桜の枝。ちょうど、満開を迎えていた。
小学生の時はここでの花見は一度きりだったが、卒業してから家族で見に来たことのある、忘れ去られた桜の名所だ。それらしいものは何も準備してこなかったが、とりあえず携帯電話で写真を1枚だけ撮った。
振り返ると懐かしい校舎。最後の卒業生だった妹とその同級生の男子、そしてたったひとりの在校生が、2階の窓ガラスに残したレタリング文字。
「ありがとう さようなら」
おそらく、この田舎の小学校では、もう復活することはないだろう。
名ばかりの休校。
どれだけぼろぼろに朽ちていても、はたから見るとなんでもない木造建築でも、ここは私の母校。桜が咲くと来たくなる、大切な場所だ。