小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アキちゃんまとめ

INDEX|42ページ/75ページ|

次のページ前のページ
 

彼女は硝子を吐き出す病にかかりました




――かつて人間であった少女は、奇妙な病に侵された。死が近づく中で彼が取った行動は彼女の心臓を入れ替えること。物言わぬ人形となった彼女は、従者のように付き従う壊れた心の野獣と、狂うこともできない蛇と共にひっそりと暮らしている。彼女の母が作ったドレスを身に纏い、時にしどけなくその身を晒しながら――

魔女の話?
なんだおめさん、最初からそれを聞きたかったんだな?そうならそうと早く言やあいいのに、随分回りくどい話し方をするんだな。え?いや、だって魔女の話っていうのも、町の皆が言っているのと同じくらいしか俺も知らねえよ。だから別に今更俺が話したところでなにか変わり映えがあるかい?…そう、か、じゃあ話してみようか。
死を招くドレスを着た魔女…その魔女には二匹の僕が居る。樹齢何百年もの樹をも飲み込む大蛇と、熊でさえも噛み殺す野獣。大蛇と野獣は彼女を永遠に守り続けるんだ。何故か?それは魔女の心臓がこの上なく上等な宝石だからだ。純度の高い蛍石という話もあるし、ルビーとサファイアが半々ずつという話しもある。それらは純銀の繊細な血管を通して魔女を動かし、生かしている。二匹は魔女の永遠の命を守るために存在しているんだ。
森に行った奴は居るのかって?おとぎ話を確かめようとするヤツらは居るみたいだなぁ。ちょうどおめさんくらいの年ごろだと、度胸試しをするだろう?そうすると魔女の居る森に行って帰ってこいっていうことを言われるわけさ。その頃になると皆、魔女なんて存在しないと薄々勘付いてきてるからな。昼の内に森へと足を踏み入れ、目印となる場所に小さな花束を置いてくる。夜にこぞって家を抜け出し、その花束に包まれた黄色い花を一本ずつ抜き取って帰ってくる。それがあいつらのおおよその度胸試しの方法だ。だが、この話にはちょっとした蛇足があってな、その日の夜を越え、早朝に行くと花束は外装のみですっかり空になってるんだ。これを見て、ガキんちょたちは魔女が持っていったと青ざめるんだがな。
いや?本当に魔女が持って行ってるのかは知らないさ、もちろんね。だけど魔女は花々の命を吸い、永遠の命を保っているという説もある。因果関係はどうであれ、こうして度胸試しで魔女の存在をまた頭の片隅に引っかけることになるんだ。
だがね、おめさんがあの森に行こうってんなら、俺は忠告するぜ。行かない方がいい。子供のかわいらしい悪戯なら構わないだろうな。だけどアンタ、魔女の正体を知ろうとしてる。あわよくば魔女の心臓を持って帰るつもりだろ?そんな奴が森の中に踏み込んだが最後、生きて帰れるとは思えないね。蛇に絡み留められて野獣に食い散らかされるだろうよ。命が惜しくないなら行くといい。俺は忠告はするけど止めやしないぜ。ん?名刺?あぁ、じゃあせっかくだから貰っておこうか。水田クン、ね。じゃあな、武運を祈ってやるぜ。

※語り手新開さんの話(2015/03/02)

作品名:アキちゃんまとめ 作家名:こうじ