じゅくこー!
軍所葵と桜庭ももか
軍所葵と桜庭ももかの会話
すべての授業が終了した、指導記録の記入作業時間の一コマ。
「私ね、はっきり言って数学が無理なんですよ」
「そうか」
「私、大学では英米文専攻なんですよ」
「へえ」
「高校では赤取ったことあるんですよ」
「大変だったな」
「だから私が言いたいのはですねえ、」
べんっ、と桜庭 ももか は書きかけの指導記録を叩いた。
「軍所さんの頭の中はどうなっているんですか、ってことですっ!」
その言葉に、それまで顔も上げずに生返事を続けていた軍所 葵がようやく顔をあげた。
「……そこに繋がるのか?」
「だってえ、軍所さんて歴史系ですよね?」
「文学部歴史学科日本史専攻だな」
「なのに軍所さんの指導履歴ときたら……英語国語に数学に社会理科!きゃー、全教科対応って、レベル高いですよ」
「そうか?」
ちなみに ももか は英語中心の国語数学サブ。
他のメンバーも、塾長でさえ ももか と似たり寄ったりだ。
「一体どうやって捌いてるんですか?」
「別に、テキスト読んで教えてれば」
「えー」
それだけじゃないでしょー、とあからさまに不満の声を上げるももかに、軍所は「まあ、」と肯く。
「……仕方ない、必殺技を教えてやる」
「え!」
キラ、と瞳を輝かせる ももか に伝授された必殺技。
「これはもう一回、次の先生に訊きなさい」
「……」
「俺にも限界があるんだよ。理系は特に。それは根津とか塾長に任せる」
「そういえばそのコメント、たま〜に見ますね。軍所さんの」
「……私立高校受験のレベルを嘗めたら怖いぞ」
「うわあ」
大学生の限界、許してください。