貯蔵庫 《2018.7.27更新》
思いがけない気持ちの放出
イメージチェンジしたいな…って
朝起きて、一番にそう思った。
なので美容院に行くことにした。
友達が紹介してくれた美容院は
ログハウス風で
喫茶店かな?と思える店構え。
「木造で素敵なお店ですね^^」
週刊誌もなにもない…
だから自然と会話をするしかない。
「木はね、一緒に年を取ってくれるでしょ♪」
丸顔で髪を頭のてっぺんでお団子に束ねて
少し小柄で少女のような美容師さん。
「将来は私の寝室にしようかと思って(笑)」
優しい木目の窓際には
麻のカーテンがよく似合って
さりげなくあしらったサボテンが
嫌味なく寛ぎの空間を演出してる。
いい感じ^^
店休日を尋ねると
「うちは勝手ながら週休二日制なんですよ(笑)」
それは‘家族を大切にしたい’
そんな自分のこだわりだという。
出産五日前まで働き
産後一ヶ月で復帰。
幼子ふたりを保育所に預けて
仕事に没頭したけども
乳飲み子を抱いても泣き止まない。
後追いもしない…そんな状況に淋しさを覚え
これでいいのか?と自問自答した。
「あ♪ 歯が生えてる^^」
我が子の成長に喜びを示したときに
周囲は「今ごろ気が付いた?」と苦笑いしたらしい。
あたしもね、同居してからは
子供を置き去りにして外の世界を求めた。
その裏側で子供がどれだけ淋しい想いをしてたかなんて
逃げ腰だったあの頃に気づくはずもなくて。。。
「今からでも遅くないですかね…?」
そう問い掛ける彼女に
「だいじょうぶよ」と
力強く…そう、それは自分へのエールも含む。。
自分で気が付いたんだもの
遅くはないよ、取り戻せる!!
「だからね、今が一番きつい時だと思うよ。」
過ぎてしまえばね、きっと楽になれる。
あたしもそうやってやり過ごしてきたから。
白髪染めをして
髪を少し軽くして
気持ちまで少し軽くなって
お勘定をして
また木戸を押し開けると
まだまだまぶしい日差しが肌を直撃する。
「またいらしてくださいね^^」
エンジンかけて左折するまで
彼女は手を振ってくれた。
軽くなったのは髪だけじゃなかったよ。
ありがと…また来るね♪
作品名:貯蔵庫 《2018.7.27更新》 作家名:遊花