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魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

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 20歳の時、帰郷した私に、祖父の妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)がアド・ミス物語の第1話を話してくれました。それを終え、「楼恋巣(ろうれんす)、この果物を食べてごらん」と手の平に赤い果実を乗せてくれました。
「おじいちゃん、これプラム?」と尋ね、歯の先でちょっぴり囓ってみました。すると甘酸っぱくて、思わず身体がキュンと。こんな反応に祖父はニコリと笑い、「ティアという果物だよ」と教えてくれました。

 ティア、それは私にとって初めてのフルーツです。今度はガブリとかぶり付くと口一杯に甘い果汁が溢れました。それからです、どことなく気持ちがワクワクしてきて、奇妙なことに嬉し泣き気分に。挙げ句に涙がポロポロと零れるではありませんか。

 この様子を見た祖父は実に満足げに、桃栗3年柿8年、梅はすいすい13年、柚子は大馬鹿18年、林檎ニコニコ25年と唱えました。そして最後に、ティアは涙で70年、と。
「えっ、そんなに、なっが〜!」と仰け反りますと、「最近思い出したんだよ、どうしたら実がなるかを」と祖父は言い、後は淡々と第2話を語り始めたのです。