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魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

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 松林の中は心地よい風が吹き、6人はそれに戯れるように、松ぼっくりを投げ合ったりして遊びました。そんな時に伽沙凛が見付けたのです、松に隠れた砂場を。それは円形で、土俵のようなものでした。
「あそこで相撲取ろうよ」
 運動大好きな安渡玲が元気よく駆け出し、これに負けじと全員突進しました。

 どすこい、どすこいとみんな声を上げ、白砂の土俵に上がりました。するといきなりのことでした、周りの緑の松林はさあっと消え、砂ばかりの世界に変わったのです。そして、なぜか目の前に城がそびえていました。

「迷子になっちゃったの?」
 泣き虫の麻里鈴の目にはもう涙が。そんな時に城門が開き、頭にターバンを巻いたおじさんがラクダに乗ってやってきました。6人は言われるままにラクダに乗せてもらって城の中へと入って行きました。

「アタイは亜尼砂(あにさ)よ。砂漠の民は涙まで涸らしてしまってさ。さっき望遠鏡で覗きよったら、嬢ちゃんが涙流してはるから、その涙、お猪口一杯おくんなまし」
 6人は驚きました。謁見した、気品ある女王様が日本の方言ごちゃ混ぜで話されるものだから。それにしても涙とは…、なんで? 子供たちがポカンと茫然自失。それに女王様がなんとオヤジ訓話をぶたれるではありませんか。

「シッコに汗、それにツバ、全部人間が出す水分だわさ。その中でイッチャン綺麗な水が涙なんえ。その純な涙をこの木に一滴吸わして上げると、ティアという赤い実がなりよります。その実を食べると、もうワクワク気分。後は嬉し泣きさ。その涙をまた他の木に、とね」

 こんな熱弁を無理矢理聞かされた子供たち、それでも何となくわかったような気になった。それを察してか、女王様は「かちこいガキンチョのこと」と持ち上げ、「chain of tears、涙の連鎖で砂漠を緑豊かな大地に変えとうおます。さっ、みんな、泣いてくだされ。涙が溜まったら、お土産にティアの苗木一本だんべ」と訴えられました。

 たとえ小学二年生であっても、義を見てせざるは勇無きなり。魔九志夢たちは円陣を組んで大泣きし、涙をお猪口に集めました。