「装備自由@here」
二人はその後も交流酒場で語り合った。rightの引きこもり生活している事やホントは二十歳の女の子という事、葉蔵のヒモ生活など…。全く違う環境なのだが、似てるようにも思える。それは恐らく、二人とも誰かに生かされてるという状態が共通項なのかもしれない。葉蔵はリアルで、他人に何度も裏切られていた事あるらしい、自分が他人を裏切ったりした事、お金や仕事や人間関係、過去に苦しい思いを何度経験してもやはり人との交流は大事だと言っていた。rightは葉蔵が気持ちを文面に出来るという事が凄いなと思った。素直に思いを言えるのが羨ましいと思った。
rightは、入団申請した。直ぐに葉蔵から許可メールがきた。名前の横に団員の印がついて猟団チャットが出来るようになった。
right>この猟団の名前ってどういう意味何ですか?
葉蔵>スタイルクエストは、人それぞれライフスタイルが違うようにハンターライフも違うから、他人を否定しないで皆で物語を作っていこうと言う意味ですよ♪
right>素敵ですね♪
葉蔵>www
葉蔵>これからもヨロシクねぇ♪
right>よろしくお願いします!
時計の針が動くように淡々としていた気がしていた時の中に、それを揺るがす風が吹いたような気がする。rightは「手を振る」葉蔵が画面から消えるまで見つめた。
#2「スタイルクエスト」
光は、久しぶりに外へ出た。靴と靴下にむず痒い違和感を感じながら玄関を開けた。久しく見ないうちに玄関先にはガーデニングしてあり、色とりどりな小さな花達が咲いていた。
特に用事は無いのだが、とりあえず歩き始めた。家の外回りの石垣沿いから家を見ると結構高台に建っているのがわかる。星を観察するのが好きな父親のこだわりなのかなと思った。何故かふと父親の趣味を思った自分が恥ずかしく感じて誰も見ていないのに顔を隠すようにパーカーを被った。いそいそと家の裏にあるカントリークラブの方へ行ってみた。カントリークラブは自宅よりも高台にあり、正門を過ぎると田園風景が広がって見えた。田んぼ、田んぼ、畑、田んぼ、民家の感覚である。用水路沿いには、ススキが揺れていて、水門からはザブザブと水の音がする。この景色からは何にも感じられない、この景色の向こう側はどうなっているのかという期待すら出来ない位見渡せていて面白味もない、この畦道は、小さい頃に父親と散歩した事がある。こんなくさっぱらのどこが楽しかったのだろうか…。家族以外とほぼ接触して来なかったから、思い出の中に大嫌いな家族しか出てこないのがイラつく、自分のせいなのに…。
後ろから車の気配を感じて道路の脇へ避けた。追い越す車の運転席を見た。…中学生の頃の同級生だった。髪を茶髪にして化粧していたが直ぐにわかった。中学生の頃と変わらないわたし…お洒落して車を運転して走り去る同級生…何が違うんだろう。走り去る車を目で追いながら時の流れを感じた。あの娘とわたしは時間の流れが違うんだ。それだけでしかない、でも、それだけの違いがとてつもなく大きく感じた。
ただ歩いているだけなのに、ただ散歩しているだけなのに、何でこんなに嫌な思いになるんだろう。夕焼けが顔を除かせるのと同時に180度回転して家に向かった。
玄関先で母親が花達に水を撒いていた。
「あら、光、出掛けてたの?」
「…悪い?」
「…悪くないけど…あ、もうすぐご飯だからね」
光は、無視して家に入って階段をかけ上がった。
すぐにPCの電源を入れてIDとパスワードを入力してロード時間で靴下を脱いで、部屋着に着替えた。
葉蔵>ばんわw
right>こんばんは♪
葉蔵>今日は遅かったね~♪お仕事?
right>いや、出掛けてましたw
葉蔵>今日は、団員さん達が結構インしてるから挨拶だけお願いしますww
right>あ、はい…緊張しますw
葉蔵>大丈夫w皆、仲間だからw
rightは猟団チャットに切り替えた。
right>初めまして~♪rightと申します。ヘタレハンターなのでお手柔らかにお願いします!w
葉蔵>よろしくお願いしますwww
ミショーン>こんばんは♪よろしく♪
凛>(′・ω・)らんらん♪よろしくなのです!
nine>初めましてwよろしくお願いいたします!ヘタレっぷりは負けませんよ~♪
ウッドマン>ばんわ♪よろしく~w
テツ>初めまして~♪(^-^)v
ローリ>初めまして♪ヨロシクねぇ~(^-^)/
リサリサ>よろしく(*^o^)/\(^-^*)
葉蔵>皆さん、rightさんと仲良くしてくれろかな?ww
ミショーン>いいとも~♪
凛>いいとも~♪
nine>いいとも~♪
ウッドマン>いいとも~♪
ローリ>いいとも~♪
テツ>いいとも~♪
リサリサ>いいとも~♪
right>あ、ありがとうございます!
葉蔵>息が合ってるねぇ~♪rightさん、行きたいクエとかわかんない事あったら団チャ使ってね♪皆教えてくれたり、クエ一緒に行ってくれるからね♪
right>ありがとうございます!ありがとうございます!
猟団ってこんなに賑やかなのかと、ビックリした。同じモニターなのに世界が一気に広くなったように思えた。何にもない自分がこんなに歓迎されるとは、思いもよらなかったのである。
リサリサ>では、私はディスに戻りますね♪rightさん、今度一緒に幻ドラ見に行こうね~w
ミショーン>ハーイ!いてらw
right>いてら~♪幻ドラ?w
リサリサは「おじぎ」をして消えた。
団チャにて
リサリサ>幻ドラは、たま~に出る強烈なドラキュロスですよ♪私はまだ二回しか見たことないの~♪
凛>二回も!?さすがイケメンハンター!
葉蔵>オレもまだ一回しかないよ~♪リサさん、スゲーなww
ミショーン>rightさん、リサリサさんはうちの団でナンバーワンのプロハンなんですよ~♪
right>おおーwプロハン!!YouTubeとかの人みたいって事ですね♪
葉蔵>まさにユーチューブですよ♪
right>凄い!www
リサリサ>廃人時代に動画アップしてたくらいですよ~♪大した事ないですよ~
ローリ>凄過ぎる!(゜ロ゜)
リサリサ>お♪PT揃ったんでいてきまーす!
葉蔵>いてら~♪
right>いてらw
ウッドマン>自分、スキシュミしながら飯行って風呂行って放置して来ますね♪
ミショーン>www
葉蔵>了解しましたwww
right>いてら~♪
凛>(′・ω・)♪
ミショーン>じゃ♪わたくしは採取で♪
葉蔵>ハーヴェストですな?
ミショーン>フフフ…もうハーデスなんですよ♪(-.-)y-~
right>ハーデス?
ミショーン>長期イベの防具ですw強いですよ♪
葉蔵>あ、オレまったく手をつけてないからrightさん、一緒に作りましょうか??
凛>(′・ω・`)うわ~ん!拷問だ~!
right>大変なんですか?w
葉蔵>大変だけど魅力的な防具ですよ~www
凛>べリル1000個とか…引くわ~
葉蔵>www
right>www
right>がんばってみようかな♪
葉蔵>じゃ、まずは渓谷いってみよう!
凛>てか、nineちゃん…寝落ち??
葉蔵>nineさーん!起きて~~
right>www
作品名:「装備自由@here」 作家名:スタイルクエスト