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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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骨折り男とシルクの少女

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「俺の所の粉が足りねぇつってんだろうが粉挽き屋!!!頭まで磨り潰されてんのかよ!!!」
「すみません、すみません。」

うつむき、ただただ謝罪を繰り返した。
目の前に立っていたのはまだまだ若いが赤ら顔のパン屋の主人。
粉挽きの仕事を任せた後に一杯引っ掛けたらしく熟れた柿のような臭いがこの狭い水車小屋に広がっていた。

そう、僕は粉挽きでありこの町の水車の管理人。

「ですが、しかし僕は届けられました袋の麦をそのまま挽いただけですので」
「嘘をつけ嘘を!!どうして三袋の麦が粉にしたら一袋に化けるってんだよ!!!」

パン屋の頭の中では麦はそのまま挽けば量が変わらずまっさらな粉になると考えているらしい。
殻や使い物にならない麦、間違って入ってしまう藁。
それが無くとも今年の粒は痩せていた、三袋とはいえ実質の中身自体一袋半良いところだ。
僕は言えないが、若さと酒の勢いも手伝った若旦那に敵はない、言うだけ無駄な気もする。

「とりあえずテメェが誤魔化した小麦の袋、夜までに返しに来い、さもなくば次の朝にはお前は広場でつるし上げだぁなァ!」
「それは……」

パン屋が言うのはきっと誹謗中傷、皆の食糧を一時的とはいえ預かる場に悪い噂が流れれば結果は明らかだ。

僕は職を失い、町を追われる。

ただでさえある理由で僕は村から白い目で見られる存在なのに、これ以上悪い噂が流れれば村を追い出されるのは火を見るより明らかだ。
本当に火を見ることになるかもしれない、抵抗でもしようものならばだが。
余りにも理不尽だが何も言葉を返せない。
そんな僕に吐き捨てるように言ったパン屋の言葉は先程の脅しよりも重かった。

「町に居られるだけありがたいと思え!!疫病神!!」



扉が叩きつけるように閉められ狭い水車小屋には僕と冷たい石臼と彼が残した嫌な臭いだけが残った。



☆骨折り男とシルクの少女★