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リンドウノミチヤ
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秋の名残り
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その薔薇は、彼女が最も気に入っていた薔薇だった。
幾重にも重なった白い花弁に青灰色の陰が幽かにさす、その美しくも密やかな佇まいが好ましかった。
とは言え、最初にその薔薇を気に入ったのは夫だったのだが。
「あんたに似ているよな」
夫は照れたように笑う。彼は時々史緒音の中に彼女のかつての仮の姿、天使とも堕天使とも呼ばれた線の細い少年を見出そうとする。呆れたロマンティストね。史緒音は心の中で皮肉っぽく呟く。最早あの頃の少年は遥か荒野に去ってしまい、私の中には何処にも存在しないのに。
作品名:
秋の名残り
作家名:
リンドウノミチヤ