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天月 ちひろ
天月 ちひろ
novelistID. 51703
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AYND-R-第四章

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第四章




翌朝、一行は決意を込めて町に入った。
最初から全員隠密の術をかけている。

城ぐるみだとしたら、当然兵士達も警戒しているだろう。
その城下町なら、普通に歩いているだけでも
当然危険となる。

一行はミクリィの祖父の言葉通り、城を目指した。
ミクリィの目には迷いがない。
真っ直ぐに前を見ていた。

「…お願いがある。あたしと爺を一対一で戦わせて」

とミクリィは朝、一行に言った。
それぞれ驚いたが、ミクリィの決意を見て承諾した。



城に着くや否や、その入り口に祖父は立っていた。
一応気づいてないようであるが、リーは隠密の術を解く。

「……姫様……」

気づいた祖父は、少しだけ悲しそうに剣を握った。

「来い、爺。あたしが、いや、あたしだけが相手する」

そう言って剣を握ったミクリィは
すでに祖父に仕掛けていた。

祖父は難なくこれを受け、剣を返すが、紙一重でかわされ
容赦なく次の素早い剣が降ってきた。

祖父は、ミクリィの動きが明らかに昨日とは
違うことを瞬時に悟る。
心の迷いがない剣は、ともすれば美しいとさえ見える
剣線をいくつも作った。

そして祖父もそれを見切る。互いの剣の応酬を
一行は見守った。

祖父が剣を振るえばミクリィが受け、返し
ミクリィが剣を振るえば祖父が受け、返す。

激しい金属音に兵達が集まったが、祖父の激しい
一喝により、加勢を阻止された。

何度目かの応酬の後、祖父の剣がミクリィの頬を薙ぐ。
その剣はミクリィの頬を浅く斬り、出血させたが
振り払いに通り過ぎて、祖父の手操にすぐには戻らない。

その隙目がけてミクリィは祖父に大きく剣を振るった。
祖父は目を閉じて、己に降りかかる刃を覚悟した。


ごん、と大きな音がした。
ミクリィは剣の刃でない方、つまり峰で祖父を思いっきり
殴ったのである。

峰と言っても重い金属の剣である。
たちまち祖父は頭を抱えてうずくまった。

「…あたしからの説教とげんこつだよ、爺」

言ってミクリィは剣を祖父に向けた。

…やがて祖父は剣を捨て、

「…参りました」

と言った。
一行はミクリィの勝利に沸いた。


と同時に、兵士達が一斉にリー達に襲いかかった。
あわてて祖父が止めるにも関わらず、兵士達は止まらない。

ミクリィはそのまま祖父を背に庇いながら
兵士達を峰うちにしてった。

だが、数が多く、相手の勢いも大きい。
その上、今祖父と戦った疲労がミクリィにのしかかった。
それでもミクリィは剣を振るう。

そして、少し遠くの兵士から放たれた弓がミクリィに迫った。
ミクリィは目の前の兵士を倒したばかりで
とっさに体が反応出来ない。

ミクリィは痛みを覚悟した。
瞬間、祖父がミクリィを庇って前に出た。

「爺―――!?」

祖父は満足そうに目を閉じた。


キン、と音がした。
祖父に痛みは走らなかった。

驚いた祖父が見ると、長髪の女性が手をこちらにかざしている。

リーが魔法障壁で矢を阻んだのである。
リーは祖父に女性と勘違いされたのだ。

そして次の瞬間、兵士達は床に倒れた。
すでにリーとミルファルによって倒されていたのである。

「ふう…こんなところかしら?」

ミルファルは鞭を翻しながら言った。

「大方は…ただ、あそこに大本がいます」

リーは城の窓の内側で笑っている者がいるのを
察知していた。
そしてその者は城の中へ消えていく。

「彼の者は、我が王にござります」

祖父が一行にひざまずいて言った。

「…なぜ、あたし達を狙った?」

ミクリィが聞いた。

「こちらが間違っていたとはいえ、手にかけようとしたのは
 事実、どのような処罰でも受けまする」

と前置きしてから

「王の命とあれば、自分が背けば兵士や民にまで
 王の権威はなくなるでしょう。権威がなくなれば
 民に混乱が生じます」

と祖父は述べた。
ミクリィは大体察しがついていたのか動じなかった。

「…なぜ父様はあたしの命を狙う?」

ミクリィは聞いた。

「自分には覚えはありませぬが、王は恨みがあると
 仰っていました」

「嘘だ!!」

思わずミクリィは声を上げた。

「はい、嘘だと思われます」

祖父は返した。

「……ど、どういう意味ですか……?」

セイファが聞いた。

「…王は変わってしまわれたのです。何やら怪しげな
 客から怪しげな品を渡されてからは、王は王で
 なくなってしまいました」

「…怪しげな品…」

思わずリーはつぶやいた。

「はい。今更自分が申し上げるのも恐れ多いながらも
 どうか王を救ってくだされ。王はもはや民にも正気の
 政を扱っておりませぬ。どうかなにとぞ願います」

言って祖父は土下座した。

一同の答えはあらかた決まっていたが
その前にミクリィが、

「…条件がある、爺もあたし達に協力すること」

と言った。
祖父は驚いたようであるが、同時に平伏すると

「…畏まりました」

と承諾した。






「ようやくこれで、怪しい品と王様に面会出来るのかしら?」

城に入ったリー達は王がいると思われる場所へ向かった。

「…おそらくは。しかし注意してください。
 ここは敵の懐の中です」

「対策班」のことを祖父に話すわけにはいかないので
リーは言わなかったが、もし、怪しい品を渡した客が
今回の事件の大本ならば、一筋縄ではいかない可能性がある。
リーは警戒を強めた。

「……え、えっと……ち、治療終わりました……」

「かたじけない」

「い、いえ……」

歩きながらミクリィと祖父の治療にあたっていた
セイファが治療を終えたようだ。
だが、その祖父の並々ならぬ威圧感からか、セイファは
ちょっと怯えている。

「王はおそらく珠玉の間にいらっしゃるはずです」

祖父は先頭に立って一行を案内した。

「……あなたの祖父って、何かすごいわね」

ミルファルがミクリィに向かって言った。

「あー、それ同感。あたしも昔いたずらしたら
 容赦なく痛いげんこつ降ってきた覚えがある。
 それにうちで爺は「鬼の老大将」って呼ばれてるから」

「…やけに納得の別名だわ」

ミルファルは苦笑いしながら首を振った。

やがて一行は、その部屋の前に立った。

瞬間、扉が吹き飛んで中から凄まじい力が
吹き飛んだ扉と共に襲いかかってきた。

轟音が辺りを埋め尽くす。力に触れた壁が
消えていった。

そして力が収まった時、一行の一番前で
手をかざしているリーがいた。

「…結構なお出迎えじゃない、まだ部屋に入ってないって
 いうのに」

ミルファルは部屋の奥を見つめた。

「いや、お見事。吹き飛ばせなかったとはな」

王は手に黒く明滅する物体を手に言った。

「――!!気をつけてください、あの黒い物から
 かなりの高密度な魔力の反応がします!」

祖父に気付かれないように、イルが全員に警告をした。

「…早いですね、もうビンゴですか?」

思わずリーは言った。

「何のことだ?」

王は返したが、リーは答えない。

「まさかお前が裏切るとはな」

王は祖父を見て言った。

「裏切ってはおりませぬ。間違った王を正しい道に導くのも
作品名:AYND-R-第四章 作家名:天月 ちひろ