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天月 ちひろ
天月 ちひろ
novelistID. 51703
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AYND-R-第三章

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狼を魔法で仕留めたところ、それが「資質」の
ある者にしか倒せない魔物であったらしく、それが元で
「対策班」に拾われた。

「対策班」に拾われたリーは、そこの治療により
みるみるうちに回復していった。
その後リーは「対策班」に絶対の忠誠を誓い
「組織」のために魔法や勉学の猛特訓に励んだ。

「…そして、今ここで「裁断」の仕事をしてるんです…
 ってどうしまうわっ!?」

リーはミクリィに抱き着かれた。
昔のトラウマを語るのに集中していたリーは
とっさに避けることが出来なかった。

「か、可哀そすぎるよリー!!そんな昔があったなんて!!」

感極まってミクリィが泣いている。

「…あ、あなたが泣いてどうするんですか、それに
 ちょ、ちょっと離れてください…!」

そう言ってもミクリィは離れない。
ますます強く抱き着いてくるので、リーは硬直した。
と同時に草を踏む音と気配を察知した。

「あ、わ、ご、ごめんなさい……!き、聞くつもりは
 なかったんですが……っ!」

「って今出て行ったらまともに気づかれると思うわって
 もう遅いけどね」

そこには謝るセイファと呆れるミルファルがいた。
だが、どっちの目にも涙が浮かんでいる。

リーは今の今まで気づいていなかった。
それだけ話がリーにとってトラウマなのである。
リーは不覚を覚えた。

二人もミクリィが心配で眠れなかったという。
心配で見に来たところ、偶然話を聞いてしまったようだ。

「…まったく、もう……。それに、ミクリィさんはともかく
 私には過去の話です。心配は無用です」

リーは言った。

「いいえ、少なくとも心のケアが必要ね。
 私なら、いつでもいいわよ?」

と言って、なぜかミルファルは服を脱ごうとした。
あわててセイファとミクリィが止める。
リーは顔をそらした。

「いやなんでそれが心のケアなんだ?」

服を押さえつつミクリィが聞いた。

「あら、知らないの?女性の体には安心する作用が
 あるって話。なら、直接の方がいいでしょ?」

「よくない!」

「よ、よくないです……っ!」

ミクリィとセイファの声が重なった。

「ふふっ、ならあなた達がやる?」

『え?』

とまた声を重ねて二人はリーを見る。
顔を赤くしながらもどうしようか迷っている表情だった。

リーは一瞬何かがぞくりとしたが、それでも
目の前の少女達が、我が身を差し出すのも定かではないほど
自分を信じてくれていると心温まり、心の中で
そっと感謝した。
感謝したが、断固として言った。

「…いや、二人が口車に乗せられてどうするんですか。
 それよりもう寝た方がいいです。大分時間が過ぎてます」

星を見ると、先ほどから大分傾いている。
宿屋から出た時間も遅かったので、後どれくらいで
日が明けるだろうか。

襲撃によって興奮していたが、そろそろ寝れるだろう。
リーは三人を促した。
そして三人も承諾した。

寝床に戻る前にミクリィが、

「ありがと」

とリーにつぶやいた。

そして三人が寝床に戻った後、

「り、り、リファインド様、ひ、必要とあれば
 「支援」の私が……!」

とチップから聞こえてきた。イルである、が、なんか様子が
いつもと違う。

「…ありがとう、でも大丈夫です」

リーは明らかにいつもと違って、無理をしているような
イルをなだめた。






「……私は、本当に構わないんだけどな……」

誰にも聞かれないように、イルはつぶやいた。

「対策班」のオペレータールームで座りながら、常時
リーのそばにいるように彼を「支援」する。

「イルさん、そろそろ交代の時間です」

サブサポートの「支援」がイルに話しかける。

「…はい、分かりました。つなぎをお願いします…」

「お任せくださいな」

言って、イルは仮眠室へ向かった。

「つなぎ」とは、「対策班」の用語で
メインサポートが休息をとる間「裁断」のサポートを
サブサポートが務める事を指す。

一日二日くらいなら訓練によってイルも大丈夫なのであるが
それでも大抵の人は、夜通しだと思考がいくらか鈍って
しまうので「支援」は定期的に休息をとる。

「……やっぱり、彼女達ならリファインド様の心を……」

言って、イルは自分の胸が苦しくなるのを感じた。


イルは、リーの過去を知っていた。
「支援」に着く際「支援」は「裁断」についても
知っておく必要がある。
「裁断」を知っておくことでより「支援」を
やりやすく出来るからだ。

そして、イルは昔リーによって救われた世界の者であり
その上イル自身、リーに直接救われた過去があった。

その時のリーはまだ勝手が分からず、イルを庇って
負傷したが、そのおかげでイルは無傷だった。

それ以来、彼女はリーに恩返しをするために必死になって
探し、ようやく「対策班」の存在を見つけ、猛勉強と
訓練、そして生来から身についていた「資質」によって
見事「支援」となったのである。

リーはイルの事を覚えてないようだった。
イルはちょっと悲しかったが、リーの過去情報を見て
それも仕方がないことだと思った。

イルはリーの心の傷を癒してあげたかった。
しかし、イルは自分の心を相手に伝えるのが苦手だった。
「支援」の時はすらすら言えるのに、イルはリーと
似たような特徴を持っていた。

自分ではリーの心の傷を癒せない。
ならばと偶然リーが知り合っていた女性を、少しだけ
その目的もあってプロテクトサポーターにしたが
まさか本当にそうなりかけていくとは思わなかった。

嬉しい反面、悲しくもある。

イルは自分の気持ちに気付いている。
だが、自分の気持ちを伝えても、人が苦手なリーを
困らせるか、あるいは距離を置かれる可能性もあった。

今のイルに出来ることは「支援」として
彼を全力でサポートすること。

彼の信頼は「支援」に対するものなのかもしれない。

…それでもいい。彼の役に立てるなら。
力になれるのなら。

イルはそう思った。









作品名:AYND-R-第三章 作家名:天月 ちひろ