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天月 ちひろ
天月 ちひろ
novelistID. 51703
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AYND-R-第二章

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第二章




リファインド・オーサラネスは
様々な世界の調律を保つ「特殊任務空間対策班」の
トップの5人の中の一人である。

様々な世界を見守るということは、ある意味その
世界の頂点にいる者達すら、その下に見ることも出来る。
だが、リーはそうしない。
別に上下関係などどうでもよく、リーはあの日以来
「組織」に忠誠を誓っているだけである。

リーは組織一の魔法の使い手で、その実力は
世界規模の異変に対応出来るほどである。

(…そうです、私は「裁断」のリファインドです…)

そう。「組織」つまり「対策班」のトップ――「裁断」。
それは、ある意味、世界をまとめる者達の
頂点に立つ者でもある。

なのに。
そんなすごい大任に就いている者なのに。

ちらとリーは後ろを見た。

「じゃあさ、道具屋はその人に任せるってわけ?」

「え、ええ…。こ、これまでも何回か少しだけ、お店を
 代わりにやってもらったことがあるから…
 だ、大丈夫です…」

「おそらく短期間では終わらないと思われますが
 よろしいのですか?」

「は、はい…。そ、その人には事情は話せませんが
 きっと大丈夫です…」

後ろでは、連絡用のチップを魔力で複製した物を使って
二人の少女と、チップ画面に映っているもう一人の少女が
会話をしている。

その様子を見て、リーは頭を抱えた。



成り行きとはいえ、二人――道具屋の娘のセイファと
少女剣士のミクリィを、「組織」公認の現地支援者
「プロテクトサポーター」にしてしまった。

ということは、今回の任務は彼女らと一緒に、遂行しなければ
ならないのである。

リーは過去二回の任務において、プロテクトサポーターは
いなかった。
というのも、リーが、事務的以外な人間関係を
苦手とするからである。
それに、それを補える実力もあった。
ゆえに、プロテクトサポーターは必要なかったのである。

(…どうなるんでしょう、私…)

今回の任務に対して言いようのない不安がこみあげて
きたころ、ふいにリーの名前が呼ばれた。

「――――リー、おいリーってば!」

「…はい、なんでしょう?」

リーは落ち着いて、とりあえず内面は極力隠して
表面上は穏やかに接する。

「ずっと呼びかけても返事なかったから、どしたの?」

「…いえ、すみません、ちょっと考え事をしてました」

ちょうどあなたたちとそれに関する自分のことで、と
リーは心の中で付け足した。

「ふーん……。まあいいや。それでさ、あたし達って
 今どこに向かってるの?」

「…とりあえず、セイファさんの住んでいる町に向かってます。
 セイファさんの道具屋のことと、あの盗賊団のことを
 そこの自警団に密告するためです」

「あ、なるほど……って密告?」

セイファのことは納得したが、その後が疑問になって
ミクリィは問い返した。

「…あまり表立って行動したくないのと、早めに
 次の手がかりを見つけたいからです。それに、自警団とも
 面倒なことになる可能性もありますから…」

「一人で盗賊団を壊滅したリファインド様のことを
 知れば、それが誰であれ、一般の者ならば
 まず、話にのぼらないことはないでしょう」

リーの説明にイルが補足する。

自警団の事情聴取とかがあるのかは分からないが
なるべくそういったことを避けるべきである。
時間的にも面倒を起こさないためにも。
それに「組織」のことはトップシークレットである。
自警団に大きく関わるわけにはいかなかった。

ミクリィは納得したようにうなずいた。


セイファの町で用事を済ませた一行は
次にどこに行くかを話し合った。

手がかりは盗賊団の首領から聞き出した
「流れの行商人」ということのみだけである。

セイファの住んでいる町やその近郊には
これ以上、治安を大きく乱すものや、手がかりはなさそうなので
一行はミクリィの勧めで、ミクリィが住んでいる村に
向かった。

そして、そのまま夜になり、一行はミクリィの家に上がった。


そして就寝時間。
リーだけは「外で寝ます」と言ったが、セイファに止められ
ミクリィに面白半分で引き留められ、仕方なしに家で
寝ることにすると、イルからなぜか不穏な気配を向けられた。

「…私も行きたいです…」

イルはリーにも誰にも気づかれずに、そっとつぶやいた。



翌日、一行はミクリィの村にもあまり手がかりは
ないと見て、ミクリィの村からさらに進んで
奥にある町へ向かうことにした。

道中、ミクリィの剣を見ることにした。
リーは剣こそ使わないが、杖を居合抜きに見立てた一撃は
剣と同等の威力がある。
剣術も多少は心得がある。

「な、なんでこんなに当たらないんだ!?」

とムキになるミクリィの剣をすべて避けながら
リーは、ミクリィの剣の長所と短所を的確に説明して
さらにミクリィの剣が良くなるようにした。

その間、セイファは家からもってきた道具で
野草・薬草などを前じて、回復薬などを調合して
旅人などに売って資金を稼いだ。

リーは、二人のこういう面を伸ばすのが良いのかと思った。


そうしてしばらくして、次の町に着くや否や、一行は
情報を収集した。
ぱっと見の治安や、看板、噂話などを調べて回った。
そうしたらその情報の中に

「この町には女領主の家があって、よく流れの行商人なども
 その屋敷に入るらしい」

というものがあった。

リーはイルに検索を頼んだ。
イルからの情報で、確かに女領主が存在しており
身元不明の者が多数、屋敷にとどまっていることが判明した。

一行は、次の目標をこの女領主の屋敷にした。
そしてさっそく問題が浮上する。

「…私はいつものこととして、お二人は屋敷に
 忍び込めますか…?」

リーは困ったように言った。
案の定、二人にそのような経験はなく、ならばと
リーは一人で行くと言った。
だが、イルが

「それでは戦力として成長しません」

と言い、更に二人も同行したいと言ったため
リーは頭を抱えた。
絶対無理、までいかずとも、無理な可能性が高い
とリーは思った。

「…不法侵入するんです。捕まって牢に入れられても
 例え命を奪われても、文句は言えませんよ」

と二人に言ったが、

「こ、この世界そのものがなくなってしまうなら…
 け、結果は変わりません…っ!」

とセイファは言い、

「同感。まあ、こそこそやるのは性に合わないけどやるよ」

などとミクリィまでもが言い出すので、結局リーは
二人を連れて、屋敷に忍び込むこととなった。


やむを得ず、リーは自分と二人に気配と姿を消す魔法をかけると
屋敷の中へ滑り込んだ。
二人もそれに続く。

イルの検索のおかげで、屋敷の全体は分かっているが
二人の速度がどうしても、リーよりかは遅くなってしまう。

リーは二人を待つ間に相手に悟られないかと
ちょっと心配になった。
世界規模の異変が起こりそうなときには、いかにリーの
魔法が優れているとはいえ、油断は出来ない。

やがて三人は、その館の女主人がいるという
部屋へたどり着いた。
そこには、見た目14~5歳くらいの少女が椅子に座っていた。
作品名:AYND-R-第二章 作家名:天月 ちひろ