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天月 ちひろ
天月 ちひろ
novelistID. 51703
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AYND-R-第一章

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AYND-R-




キャラクター紹介
○リファインド・オーサラネス
通称「リー」。本編の主人公。物腰柔らかく、下の者に対しても
敬語を使う18歳の青年。事務的な人間関係はさらりと出来るが
それ以外の人間関係がかなり苦手で、単独で行動することを好む。
様々な世界の調律を保つ組織「特殊空間任務対策班
(通称・対策班)」のトップのクラス「裁断」に所属している。
組織一の魔法の使い手。


○イルメシュ・カウリィ
通称「イル」。「対策班」の真ん中のクラス「支援」に
所属しているオペレーター。今回のリーの任務をサポートする。


○セイファ・ローラトー
リーが向かった世界に住んでいる少女。道具屋を一人で
経営している。口調と態度はおどおどしがちだが
芯の通った性格。


○ミクリィ・ライレ
リーが向かった世界に住んでいる少女。
少しぶっきらぼうな口調でのんきさを見せることがあるが
曲がったことをしない気質の持ち主。


○ミルファル・ララメイ
リーが向かった世界に住んでいる女領主。
実年齢よりも態度と言動が大人びており、周りを
翻弄することが多い。







第一章




穏やかな午後の昼下がり、つやのある緑の草花に
囲まながらたたずむ一軒の家。
回りには他に民家は見かけられず、自然がかなり遠くまで
広がっている。
そんなところに住んでいるのは、隠居した老人ではなく
今年で18歳になる青年だった。

(……ふう。やっぱり読書しながらゆっくり紅茶を飲めるのは
 落ち着きます…)

その青年は、一見普通の女性にも見えるほど、長くて青い髪を
しており、ふともも辺りにまで、そのふんわりとして
ヴエーヴがかかっている髪がかかっていた。
線も細く、女性と見間違える人も多かった。
目元には愛用の小さなメガネをかけている。



この青年の名は「リファインド・オーサラネス」といって
元々はごく一般の普通の家庭にいた。
しかし数年前に家族と別れ、今はこの家に住んでいる。
回りに人一人いないこの環境。当然、水も食糧もまわりから
供給されているわけではなく、本人の魔法がそれを
補っていた。

趣味は読書と魔法の鍛錬。
嫌いなものは、例外あるがほぼ人。
…というくらい、人間関係が苦手な青年でもあった。
だが、表面にはほとんど出さないので、まわりからは
好青年と見られることが多かった。


そんな趣味の読書で本を読んでいると、空間から
すっと何かが浮かび上がった。

(…?)

浮かび上がった気配を、ほぼ瞬間に同時に察知した
リファインド(以下リー)は、それが魔力で送られた
手紙であることを、次の瞬間に知る。

(…おや……依頼ですか…?)

手紙の主は、過去にリーの命を救ってくれた
リーの所属している「組織」からだった。

(……)

詳細を読み進めていくうちに、リーはのんびりとリラックス
していた顔から真剣な顔になっていった。
やがて、心の中でリーは小さなため息をつく。

(……やれやれ。この本の続きを読めるのは、かなり
 先になりそうですね……)

少しだけ残念にした後、リーは読んでいた本を閉じ、手短に
用意を済ませてから転移魔法でその「組織」に飛んだ。

(……それに……変に胸騒ぎがします……。
 ……今までより、本の続きを読むことが出来ない時間が
 長くなりそう……?)

リーは思った。彼の勘は鋭く、当たったことは多い。





「…特殊空間任務対策班、クラス「裁断」リファインド・
 オーサラネス、呼び出しにより参りました」

「組織」に入ってからリーはすぐに、その中心、オペレーター
ルームに入った。
というか、最初からその扉の前に彼は飛んでいた。
中では15人くらいの人が、モニターとコンピューター、または
書類などに向かって作業している。
扉の前で待っていた少女は、少しも驚かず
リーに向けて手をかざすと、

「……はい。リファインド様であることが確認されました。
 素早くお越しくださってありがとうございます」

とリーに言った。
そして居住まいを正して、

「今回リファインド様のメインサポートを務めさせて
 頂きます「イルメシュ・カウリィ」と申します。
 「イル」とお呼びください」

と名乗った。

イルと名乗った少女にリーは見覚えがなかった。
過去に二回リーは任務に就いているが
その時は別の人だった。

イルは紫のセミロングに青い目、服装はここで使われている
オペレーター服だった。頭にマイク付きのヘッドホンをしている。
その背はかなり低く、外見は8歳くらいの少女にも見える。

「サポートよろしくお願いします。……では、早速
 概要を把握したいのですが…」

リーは切り出した。イルの外見からは戦力を判断はしない。
ここにいること自体がすでに、その戦力を証明していた。

「はい、こちらへお越しください」

イルは中央にある大きいテーブルに、リーを誘導した。

「お疲れ様です」
「お疲れ様です」

先にテーブルに広がっている地図に何かを書き込んでいた
何人かの女性職員が、リーに向かって挨拶をした。

「…お疲れ様です」

リーも続けて丁寧に返した。
心なしか返された方の女性職員の数名の顔が赤く見える。

「…これが今回の世界ですか?」

リーは言った。

とても大きな地図に、町や村、洞窟などが記されている。
リーはざっと見て位置を把握していった。




リーが所属している「組織」つまり
「特殊空間任務対策班」は、通称「対策班」といい
存在する様々な世界同士の治安を守る組織である。

「対策班」は三つのクラスに分けられており
上から「裁断」(現地に赴き裁きを下す)
   「支援」(「裁断」をサポートする)
   「調達」(必要な物資などを集めてくる)
となっている。

「調達」の人数は多いが「支援」は30人いるかいないかで
トップクラスの「裁断」は現在5人しかいない。

「裁断」に就ける人材は
「世界を超えて世界の治安を乱す勢力に対抗できる力」と
「精神に異常をきたしていなく、任務を着実に遂行できる
 精神力・性格」
の両方を兼ね揃えている者しかなれない。

その中で、リーは組織一の魔法の使い手だった。




「はい。この世界「ヴァリルミーグル」が
 今回向かってもらう世界です」

地図を見ながら、イルはその後言った。

「長いから「ヴァリル」でいいですね」

一瞬、リーは呆気に取られた。
「裁断」を無視して普通に「支援」が世界の正式名称を
最初からいきなり略したのは初めてだったのである。
だが、リーも同意見だったので

「…そうですね、それでいいです」

と言った。

「この「ヴァリル」から異様なほどの魔力の様な
 エネルギーを感知しました。ですが、観測されたのは
 一瞬だけで、以降その気配はありません」

イルはリーに言う。

「一瞬だったので出所も掴めていませんが、計測器の
 数値からすると、十分に複数の世界を殲滅するほどの
 威力がありました」

イルの口調は淡々としたものだったが、少しだけ
まゆげが下がっていた。そしてその内容も驚きである。
作品名:AYND-R-第一章 作家名:天月 ちひろ