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メドレーガールズ

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  キャプテン


「志生野、ちょっと来てくれない?」
 給食を食べて少し眠くなる昼休み、廊下で私達四人が雑談しているところを通りがかった水嶋先生は、律っちゃんを見つけて職員室までついて来るように言った。ちょうど昨日のテレビの話で盛り上がっていたところで、律っちゃんはちょっと残念そうだったけど、私達に
「じゃあ、放課後プールで」
と言って、先生の後ろに付いて廊下を真っ直ぐ歩いて行った。
「キャプテンって大変だね……」
 私は遠ざかる律っちゃんの頭に乗った「お団子」を見て呟くと、両脇の二人も頷いていた。
 私達のキャプテンは風格も度胸もある律っちゃん以外に考えられない。真由ものんたんもクラブや塾で忙しいし、私じゃ役不足だ。口には出さないけれど、彼女には彼女なりの決意があるのを知っている。

 律っちゃんは四歳の頃三つ年上の兄、廉太郎(れんたろう)君の影響で水泳を始めた。小さい頃揃いのジャージで二人がプールに行くのをよく見た。私にも優しくしてくれる隣のお兄ちゃんも浦風中学校では水泳部にいた。当時は男子も水泳部があったそうで、確か廉太郎君が最後のキャプテンだったと廉太郎君とは同級生のお姉ちゃんから聞いた事がある。
 しかし男子水泳部は部員不足で無期限休部、最後の年は部員3名しかおらず、個人成績は良くても大会のラストを飾るメドレーリレーにも出られなかった。それが心残りだったようで、兄の無念をメドレーリレー優勝でスッキリさせてあげたい
なといつものベランダ会議で語っていたことがある。でもこの話は
「クサい話だから真由たちにはナイショだよ」
と釘を刺されているので、二人だけの秘密だ。

「帆那、次体育だよ」
「あ、ホントだ。じゃね、真由」
 同じクラスである私とのんたんは時計を見て我に帰り、真由と別れて慌てて教室に戻った。

作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔