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メドレーガールズ

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  偵察部隊


 メドレーリレーの代表を決めるトライアルの日まで一週間を切った。最初は私と律っちゃんだけで早朝自主トレをしていたけど、それを聞いたのんたんも一緒にするようになった。先週は律っちゃんの計らいで、お兄ちゃんの廉太郎君の指導付きで温水の市民プールで特訓もして、この一週間で自信と体力を付けてきた。
 トライアルはやってみないとわからない、決められた日に調子を合わすのも練習のうちだ。やらないことには始まらない。当面のライバルである一年生の真美ちゃんは真由と一緒にクラブチームで練習しており、気持ちは焦るばかりだ。
 部活では背伸びをせずに基礎練習に徹した。律っちゃんからは気持ちを、廉太郎君からはストロークの回数にこだわることを、真由からはターンの後に焦らないことを教えられ、不器用な私はそれだけに集中して練習することにした。そしたらのんたんが、
「私もそうだよ、あれこれ試さないのは」
と言うもんだから、私の焦りはだんだん感じなくなっていた――。

   * * *

「えー、このwasがhas beenに変わると……、次は、蓮井さん」
「あ、は、はい!」
 反射的に席から立つと教室に笑い声がこだまする。そう言えば授業中だった。
「ごめんなさい、聞いてませんでした!」
もう一度笑い声が響く。朝トレに疲れてつい別の事を考えていた所を先生は見逃さなかった。呆れ顔で私を見つめている。
「部活も大変だろうけど、授業はちゃんと聞いててね」
「はーい……」
 教室は静けさを取り戻し、私は肩を落として席に座ると、横からクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「災難だったね」
 笑っているのは隣の男子を一人挟んだ向こうにいるのんたんだ。口パクで私に囁いた。私と同じ様に朝練しているのに疲れを見せずしっかりしている。いつもそうだけど、彼女は切り替えが上手だ。悪気のない笑顔に私もつられて笑った。
 気を取り直して授業を聞いていると、のんたんから手紙を渡された。

 「今日の夕方、真由の練習見に行かない?」

 今日は台風が近づいているということで、プールは使えない事が決まっている。それに合わせて今日は体を休めようと決めていたが、私ものんたんも気持ちが落ち着かないので、イメージトレーニングしようというのが手紙の内容だ。
 私が笑顔で頷くと、のんたんも微笑んだ。普段はクールに見えるのんたんも静かに闘志の炎を燃やしているのが見えた。チームメイトの真由や、大会では必ずライバルになるだろう選手のデータが欲しいみたいだ。

作品名:メドレーガールズ 作家名:八馬八朔