短編集『ホッとする話』
十ニ ある雪の日
神戸に雪が降った。同じ神戸市でも東西に広がる六甲山系が市の気候を分けることがしばしばあり、山の南側で育った僕は雪景色に慣れていない。この辺で積もるほどの雪が降るのは年に一度か二度くらい、だから子供の時は冷たいことも忘れて校庭をはしゃぎ回って遊んだものだ。先生も雪が珍しいのか、時代がそれを許したのか、雪の日は休み時間(始業時間だったかな)を遅らせて校庭で遊ばせてくれた。雪が降れば交通は混乱するし、雪深い地方の方は雪かきなどが大変なので、雪に悩まされる人も多いと思うけど、個人的には雪景色は冬らしくて好きだ。
雪を見るたびに僕はあの時を思い出す――。
作品名:短編集『ホッとする話』 作家名:八馬八朔