逢魔ヶ刻の少女
かちゃりと、喫茶店の扉が背後で閉じる。
熱い日差しが目を焼く。まるで吸血鬼の気分。
――一度流れ始めた噂は消えることはない。例え鳴りを潜めることはあっても、消えてなくなった訳ではない。あの廃レストランからステーキを焼き続ける新人コックの生き霊が消えたとしても、人間ステーキという怪談まで消えた訳ではない。
だから、噂はタチが悪い。火のない煙は、消し様がない。
カンテラはその噂が形に成らぬことを祈りながら、廃レストランに戻る。
噂も幽霊も、実体がないくせに実態を持っている。存在があやふやなくせに結果だけはそのまま残して行く。
――まるで、幽霊のように。
――『煙に巻く』了