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Savior 第一部 救世主と魔女Ⅳ

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【ある少女の話をしよう】


 あるところに一人の少女がいた。名前はリゼ・ランフォード。彼女がどこで生まれたかは誰も知らない。分かっているのは、両親と一緒に隠れるように住んでいたことだけ。
 何故かって彼女はちょっとばかり“特別”だったんだ。そして、そのせいで狙われていた。誰にかって? 悪魔に、だ。

 彼女が狙われていることを知っていた彼女の両親は、彼女が生まれる前から悪魔に見つからないよう隠れて住んでいた。でもある日とうとう見つかってしまった。

 悪魔は彼女の父親を殺した。母親を殺した。それだけじゃない。その後、少女を引き取った彼女の祖父を殺し、叔父を殺した。
 家族を失って、彼女は孤独になった。そして、孤独になった彼女はある決意をした。
 それはこの世の全ての悪魔を滅ぼすこと。

 彼女には不思議な力があった。悪魔を祓い、人を癒す力。悪魔を浄化し滅ぼす力。これがあれば、悪魔を滅ぼすことができる。何年かかっても、何十年かかっても、いつか必ず。

 そして彼女は旅に出た。
 彼女には剣があった。祖父に教えられた魔術があった。その二つとあの不思議な力で、あてもなく彷徨っては見つけた端から悪魔を殺し続けた。魔物も人に取り憑く悪魔も、斬り、祓い、浄化して滅ぼした。大人になってからも同じように悪魔と戦い続けた。

 いつしか彼女は“救世主”と呼ばれるようになった。例え相手が誰であっても関係なく悪魔憑きを癒したから。教会が救ってくれない罪人と呼ばれる人達は、彼女を崇め、敬った。でも彼女はその呼び名が嫌いだった。
 だって悪魔を祓っているのは、全ての悪魔を滅ぼしたいから。慈悲深く、清く正しい人間ではないから。
 神様がこの世に遣わして、悪魔を滅ぼし全ての人間を救うという救世主。そんな大それた者ではないと分かっていたから。

 彼女は神を信じちゃいなかった。悪魔を蔓延らせたままにしている神様なんてただの無能でしかないと思っているから。教会も悪魔憑きを救う方法があるのにほったらかしにしている。神の教えを守らないというつまらない理由で。だから無能な神様にも無能な悪魔祓い師にも頼らない。例え一人でも――いいや、一人で悪魔を滅ぼしてみせると。

 しかしある日、彼女は教会に捕まった。何故かって? 彼女は悪魔祓い師でもないのに悪魔憑きを癒していたからさ。得体のしれない力で悪魔祓いを行い、“救世主”とまで呼ばれている人間を教会は野放しにしておくわけにはいかなかった。自分達よりも求心力のある人間なんていたら困るからね。神のものではない力を使う者はみんな異端。そうした方が教会にとっては都合がよかった。
 そして、彼女は“魔女”と呼ばれるようになった。悪魔に魂を売り、悪魔の力で人に害なす恐るべき“緋色の髪の魔女”に。

 その時に出会ったんだ。
 罪人をも救いたいと考える、一人の変わった悪魔祓い師に。