Modern Life Is Rubbish ギリシャ旅行記
「残業ゼロ」の本のほうは、正直、オランダに旅した後で考えると、旅行自体に役立ったとはいい難い。しかし、私はこの本にはそれは期待していなかったから、問題ない。この本では、オランダ人のメンタリティを文字を通してではあるが理解できた。
//この本の一節より引用その1
「・・・らしさ」は、日本では今も期待されている。他人からの目。無言・無意識の他人からの期待にしばられて、自由に自分らしく行動することが難しい。
「・・・らしさ」を気にしないでいられるオランダのような社会では、自分はどう生きたいのか、自分は何者なのかを常に考えそれに矛盾しないように行動することをしばしば厳しく問いかけられる気がする。
//この本の一節より引用その2
(親の子供との接し方について)
わざと世話は焼かず、自分はどんと腰掛けたまま、「自分でやってみてごらん」と自立を促し、少しでもできたらすかさずほめる。一方、自分の子供が助けを求めているときには、他人の視線は気にせず、からだいっぱいの態度で愛情を注いでやる。
そんなオランダには、パートタイム就業を正規雇用(年金、有給休暇、社会保障の対象)として認めるワークシェアリングが根付いている。この結果、労働者が労働時間を選んで仕事を選べるようになり、雇用機会が増えて家計収入も増大し、失業率の低下にもつながったとのこと。ある家族のモデルとして、母親が週3日出勤(平日2日は育児)、父親が週4日出勤(平日1日は育児)、残りの平日2日は保育園に預ける、というモデルが紹介されていた。
これをどう感じるかはもちろん人によると思う。私にとっては理想的な社会に見える。
このあたりまでは、なんとなくの知識で、なんとなく知っていた。
この本で新たに知ったのは、この形を実現し、根付かせたのは1982年の「ワッセナーの合意」であることだ。オランダ製品の国際競争力の低下と失業率14%という高さを背景に、政府の支援により、雇用者団体と労働者団体との間で、賃金の削減と、雇用確保のための労働時間短縮について合意したのだそうだ。
問題は、これがワーカホリック大国、日本で実現可能か?というところにあるが、やっぱり、失業率もさほど高くなく、メンタリティ的にもワーカホリックで遊び下手な日本人にはなかなか難しいんだろうかないかなるものか。みんな、そんなに仕事がしたい?みんな、そんなにお金がほしい?
そんなこんなを読みながら、アムス到着。アムスに着いたのは夕方で、近代的にきれいで清潔な街は素敵だったが、ギリシャに比べると、9月初めのアムスの空気はひんやりとしていた。長袖の厚手のパーカーを羽織るのがちょうどいいくらいの気候。
到着したホテルは、想像していたよりもかなり小さくかなり古い代物であった。ギリシャで泊まった夢のようなホテルたちとは雲泥の差だ。もちろん、アムスは都会だしのんびりホテルで過ごすというよりは街に出てすごしている時間がほとんどだと思うからと、意図的に、ギリシャよりもグレードのだいぶ低いホテルを選んだのは確かである。しかし、こんなにも横幅が狭くてエレベーターすらない宿だとはきいていない。フロントのにいちゃんは(フロントというよりもカウンターといったほうがしっくりくるような小さなフロントである)、金髪くるくるパーマで愛くるしい顔立ちはしているが、なんともバイト風の感じである(失礼)。とりあえず一生懸命、重いスーツケース×2人分を夫が階段で運んでくれ、部屋に着くと、「ダブルベッド」を予約したのに「ツインベッド」の部屋であった。
「まあ、しかたないよね!」
「まあまあまあ、アムスだし、ね!こういうのもいいじゃん!」
お互いに下がってくるテンションを隠しつつ、励ましあう。むろん、ホテルで長居はせず、早々に夜のアムスに繰り出す。アムスの繁華街は、多国籍感が満載で、マリファナのにおいにしょっちゅう遭遇した。多国籍の中の、適当なイタリアンレストランで食事をとって、ワインとビールで酔っ払ってぼーっとした私たちは、結構な時間をかけて歩いてそのモーテル風のホテルに戻り、眠りについた。
作品名:Modern Life Is Rubbish ギリシャ旅行記 作家名:夏目 愛子